アイルーキッチンで朝食を★ Episode00-2 > 1
Update : 20100206
1/17のイベントで無料配布させて頂いた『アイルーキッチンで朝食を★ Episode00-2』です。※特に手を加えたりしていません。ので、意味が分からない方もいらっしゃると思いますが、補足はその内にでも。。。。
 

ルルル〜ン♪と、フフフ〜ン♪と、鼻歌混じりにスキップまでして、フィンランドは買い物籠を片手に市場へと向かっていた。
途中、見晴らしの良い高台に寄り、村を囲む様に連なる山々を眺める。
「わ〜♪何か今日は、山が一際綺麗に見えるな〜♪」
ポッケ村周辺は今日もいい天気で、真っ青に晴れ渡った空に、真っ白な雪山が、それは見事に映えていた。

「今日もスーさんが無事に帰ってきますように…!」

山に向かって手を合わせ、簡単なお祈りをして…。
主人であるスウェーデンを思い浮かべ、エヘヘと笑みを浮かべる。
凍えるような冷たい風がヒュウッと通りを吹き過ぎるが、それすらも今のフィンランドには爽やかな風に思えたり。

不思議だよね〜…。
スーさんの事考えると、心がホカホカして、寒いのとか気にならなくなっちゃうんだもん。
スーさんがあったかいから、それ思い出すからなのかな?

今夜から、またあの腕の中で温々と眠れるのだと思うと、それだけでポワ〜ンとなって。
早く帰ってきたらいいのにな〜と思いながら…。

「よお、今日はまた随分と幸せそうだな、フィンランド」

ポワポワと歩いていれば、ふいに上から声を掛けられた。
「あ、フランスさん!こんにちは〜!」
「はいよ、こんにちは。買い出しか?」
「ええ、フランスさんもですか?」
フランスは酒場で働くキッチンアイルーだ。
この村のキッチンアイルーの中で一番レベルが高く、年長者でもある彼は、スラリとした長身に、薄く顎髭なんかも生やして…耳と尻尾はあるものの、人間の大人と遜色ない外見を有していた。
「んー、農場で落陽草とハチミツをちょっとね…」
「へえ〜…イギリスさんに、ですか?」
落陽草とハチミツの組み合わせで出来るのは『元気ドリンコ』という飲み物だ。
ハンターズギルド公認のその飲料は、スタミナと疲労状態を回復させる効能がある。
以前、スウェーデンに調合書を見せて貰った事があったから、フィンランドはその飲み物とレシピを知っていた。
それを彼の主人であるイギリスに作ってあげるのかと聞けば、
「ん〜、まあ、それだけでもないけどね」
フランスは軽く肩を竦めてそう言った。
「酒場のお仕事って大変そうですもんね…」
そっかぁなんて頷きながら、スウェーデンにも作ってあげようかなと思う。

アイルーが調合するなんて…考えたこともなかったけど…。
そっか…、別にしてもいいんだよね…。
調合ってお料理に似てるし…僕にも出来るかも知れない…。
それに、何かいいもの出来たら、スーさんが喜ぶかも…。

スウェーデンに感心されたり、褒められたりしたら、もの凄く嬉しいかも…なんて、そんな様を思い浮かべてポワポワ〜ンとなっていれば、
「あ、そうだ。ちょっと時間あるか?」
フランスが思い出したというようにそう言った。
「え?ええ、大丈夫ですよ?」
「そ?んじゃ、寄ってけよ。珍しい果物が入ったからさ。よかったら旦那に出してやって☆」
「いいんですか?」
「ああ、旦那が頑張ってくれたお陰で、新しいルートが通じたんだからな」
このポッケ村は、山間部にある小さな集落だ。
前任者が引退した後、スウェーデンが来るまで少々間が開いてしまった為にモンスターが増え、商用ルートのいくつかが途絶えていたのだが…。

そっか、スーさん頑張ってるもんね♪
新しい商用ルートが開通したんだ♪

フランスの言葉に、何だか自分が褒められでもしたかの様に誇らしく嬉しくなって、ウキウキしながら。
前を行くフランスを小走りで追い掛けて、酒場まで…。
「わぁ〜…」
まだお子様のフィンランドには、馴染みのないその場所…。
今まで、足を踏み入れたこと等、一度もなかった店内を、物珍しそうに眺める。
開店前なので、当然、客の姿はなかったが、他のキッチンアイルー達が掃除や仕込みをしているから、店内は結構賑やかだった。
「は〜…、やっぱり、お酒が沢山ですね〜〜」
棚に並んだ酒瓶の多さに感心して言えば、
「旦那は酒はやんないのか?」
カウンターの向こうに回ったフランスが、ジュースを出してくれながら、そういや…と聞いてきた。
「え?あんまり沢山じゃないですけど…、呑みますよ?」
「ふぅん?旦那、ここへは一度も顔見せてないからさ、呑まねーのかと思った」
フィンランドは「あー」と曖昧に頷き、ありがたくジュースを頂く。

スーさん、いっつも真っ直ぐ帰ってくるもんね…。
お酒よりご飯の方が好きなのかな?
でも、ここでだって食べられるよね…?
フランスさんのご飯は美味しいって評判だけど……。
もしかして…、僕のご飯が食べたいのかな…なーんて♪

一昨日の晩、もの凄い失敗をして、クビの心配をしていた昨日は何処へやら…。
フィンランドは『いつも真っ直ぐに帰ってきて自分の料理を食べてくれる主人』を思い浮かべて、フフフと笑った。

今夜のご飯は何にしようかな…?
スーさん、何が食べたいかな〜?
今日のクエストは砂漠だって言ってたし…、サッパリとお魚とかがいいかなぁ…。

そのままポワポワと、夕飯のメニューを考えて…。
あ、そうだ!とフィンランドは思い出した。

 
アイルーキッチンで朝食を★ Episode00-2 > 2
Update : 20100206
 

「ねえ、フランスさん、夜のオトモって…何するんですか?」

朝は何だかんだと忙しく、結局スウェーデンに尋ねるのを忘れてしまったのだ。
年上で情報レベルも高いフランスなら知っているかもしれないと、そう思って……。
「おやま、いけない子だね〜。どっからそんな言葉覚えてきたんだ?」
棚から取り出した炎熟マンゴーを袋に入れてくれていたフランスは、驚いたように目を瞠った後、面白そうな顔をして調理台の向こうから身を乗り出してきた。
「え〜、どっからっていうか…僕、スーさんの夜のオトモになったんですよ♪」
フィンランドはエヘンと胸を張ると、ちょっと誇らしそうに言う。
「は?」
「だから、しっかり務めを果たしたいなって思って…。でも、どんな事するのか分からないから、フランスさんなら知ってるかな〜って思ったんですけど…」
「おいおいおい…、お前…、あの旦那とどんなコトになってんだ?」
「え?どんなコトって…?スーさんは僕に、ずっと側にいて欲しいって言ってくれましたけど…」
唖然とするフランスそっちのけで、フィンランドは夕べのことを思い出し、ポッと頬を赤く染めた。
嬉しくてどうしてもエヘヘ〜と笑みが浮かんでしまう。
「へ、へぇ〜……あの無口で不愛想な旦那も、言う時ゃ言うってか…」
「スーさん、僕のこと何処にもやるつもりはないって言ってくれたんですよ〜♪」
幸せを絵に描いたような顔とはまさにこの事だろう。
周囲に花を舞い散らしているフィンランドに、フランスは暫く感心したような顔をしていたが…。
「ふ〜ん…、でもお前…簡単に引き受けちゃって良かったのか?」
ニヨニヨ〜と嫌な笑みを浮かべてそう言った。
「え?」

「夜のオトモってなぁ……痛いぞぉ〜〜?」

きょとんとするフィンランドにズイッと顔を寄せ、フランスはボソリと、けれどハッキリキッパリとそう言った。
「えっ?」
「もしかすると、お前、死んじゃうかも」
「えええっっ?!?!?!」
「だってお前、そのナリで、あの旦那が相手だぞ?」
「え……、だ…、ダメ…ですか?」
「いや、ダメってゆーかさ、お前…相当無謀だよ、マジ」
ウンウンなんて、重々しい顔つきで頷きながら…。
フランスの言葉に、フィンランドの顔からサササーッと血の気が引く。

む、無謀だったの?
どどど、どうしよう…、死んじゃうかもなんて…!
死んじゃうかもしれないほど痛いって…、よ、夜のオトモって…、そんな危険で怖いことなの?

「で、でもでも、デンマークさんはそんな事全然…」
不安になってオロオロしてしまうフィンランド。
「あ?デンマークの奴が何か言ったのか?」
「うん、スーさんは僕が夜のオトモになったら喜ぶだろうみたいな事を……」
「お前な…、そりゃ冗談っつーか……でも、旦那は喜んだんだろ?」
「ええと…、多分…?僕、眠くて起きてられなかったんだけど……。でも、スーさん笑ってたよ?」
「へぇ…あの旦那も笑うのか……っていやいや、お兄さんちょっと状況が理解不能なんですけど…?」
「ど、どうしましょう〜、フランスさん〜っ!」
話の見えないフランスに、けれど、フィンランドには状況を説明する余裕なんて皆無で…。
「僕、何するのか知らないで夜のオトモするって言っちゃったんですよ〜!痛いの嫌です!恐いですよ〜!」
「え?何、お前がするって言ったの?旦那に言われたんじゃなくて?」
「そうですよぉっっ!どうしよう……今更、夕べのやっぱりなしなんて言えないですよ〜〜!」
真っ青+半泣きのフィンランド。
からかっているフランスですら、ちょっと不憫になる程の怯えっぷり、不安がりっぷりだが、そんな様子がまたこれ以上ない程愛らしい。
もっと苛めてみたらどうなるか…とも思うが、あまり度を過ぎると、スウェーデンが乗り込んでくるかも知れない…なんて思って、フランスはポンポンとその背を叩いてやった。
「あー…いや、まあ、あの旦那の事だから、お前がもちっと大きくなるまでは待ってくれる気なんじゃないの?」
フランスの言葉に、フィンランドはグスッと鼻を啜る。
「……お、大きくなったら…平気なんですか?」
「ん、そりゃあねぇ…。大分楽にはなるだろうな」
「…楽に…?そうなんだ…?」
まだまだお子様なフィンランドには、それがどうしてなのかは分からない。
だから、それならば待って貰おうかな…なんて思うのだが、フランスはそれには意地悪そうな笑みを浮かべて…。
「ん〜…でも、我慢ってのはカラダとココロに良くないからねぇ〜…」
そんなことを言い出す。
「ええっ?!?!?!じゃ、じゃあ、どうしたらいいんですか?」
「さあ、お兄さんもそこまで口出すのはねぇ…。旦那に相談してみたらどうだ?」
「そ、そんなぁ〜!ねえ、夜のオトモって何なんですか?そんな、死んじゃいそうに痛い事、して欲しい物なんですか?」
「して欲しいっつーか、したいっつーか…、ほら、旦那もお兄さんも男の子だからね〜♪」
「僕だって男の子ですよっっ!!!!」
思わず半泣きで叫べば、フランスは悪びれた風もなく「あ、そうか☆」なんてニヨニヨと笑った。
「ま、愛がありゃ平気だって♪」
「何ですかそれ〜っ!意味分かんないですよお〜!」
「ん?そもそも、意味も分からないような事言っちゃったのが悪いんだろ〜?ま、これも勉強だな、フィンランド。大人になる為のお勉強♪」
頑張っておいで☆なんて。
明らかに楽しんでいる顔で。
「ふ、フランスさんの意地悪っ!」
ヨシヨシと頭を撫でるその手を、フィンランドはぺちんと叩いた。
そして、
「どうせ、僕はまだまだ子供ですよっ!もし今夜、僕がホントに死んじゃったら、絶対お化けになってここに来ますからねっ!」
イーッだ!と歯を剥きだして見せると、そのまま店を飛び出してしまう。
「ありゃりゃ、怒っちゃったか〜」
残念そうに呟きながら、それでも楽しそうな笑顔はそのままのフランス。
「まーったく!フィンランドさんを苛めちゃダメっすよ!」
側で拭き掃除をしていたセーシェルが、咎めるような言葉と視線を投げるのにも、ニヨニヨと笑って…。
「だって、フィンランド可愛いんだもんよ〜♪お兄さん、ほっとけないって♪」
「そんなコト言って…、ハンターの旦那さんに尻尾ちょん切られちゃっても知らねーっすよ?」
「あの旦那もからかい甲斐ありそうだよな〜♪一回くらい来ねーかなぁ♪」
なあ?なんて聞いてくるフランスに、セーシェルは深々と溜息を付いた。
「…一回くらいホントにちょん切られた方がいいって気がしてきたっす」
「あれま、酷い事言うな〜、セーちゃん。お兄さん泣いちゃうぞ〜!」
「煩せーです!とっとと仕事に戻れですよ!」
唇を尖らせたセーシェルにそう言われ、フランスはヤレヤレなんて言いながら、仕事に戻ることにした。
開いたままのドアの向こうへチラリと目をやれば、通りを駆けて行くフィンランドの姿が小さく見える。

まあ…、オレ等の成長は主人次第だし…。
あんだけ可愛がられてりゃ、アッという間だろうけどねぇ…。

「どーせなら、時間かかれば面白ぇのにな〜…」
「はい?何か言ったっすか?」
ニヨリと悪い笑みを浮かべて呟けば、それを聞き咎められて。
「いーえ、何でもないですよ〜、お嬢様♪」
フランスはニカッと笑ってみせると、コックコートの袖をまくり、調理場へと向かった。

 
アイルーキッチンで朝食を★ Episode00-2 > 3
 



どうしようどうしようどうしよう…。
まさか、夜のオトモがそんなに恐くて危険なことだったなんて…死んじゃうかもな位痛いなんて…、どれだけ痛いの?
ってゆーか、ホント、夜のオトモって何するの?
何したらそんなに痛いの?
どうしよう、僕、痛いのやだよ…。

家に戻ったものの、フランスに聞いた事で頭が一杯のフィンランドは、何をする気にもなれずに…。
「どうしよう…」
キッチンをウロウロと歩きながら、小さくそう呟けば、
「……フィン、おめぇ…具合悪ぃんでねぇのけ?」
今日は留守番をしているノルウェーが、素振りの手を止めて、フィンランドの顔を覗き込んできた。
「え…あ……、へ、平気だよ…!」
「平気って…真っ青だっぺよ…?」
プルプルと首を振ったフィンランドに、ノルウェーは顔を顰める。
「具合悪ぃんなら、無理しねぇで休んでろ」
「無理って言うか……。あ、あの…、ノルウェーさん、夜のオトモって…何をするか知ってますか?」
「は?」
突然の話題の変化に付いて行けず、ノルウェーは一瞬きょとんとして…けれど、フィンランドのこれ以上ない程真面目な顔と、必至な様子を見れば、ゴホンと軽く咳払いをした。
「いや…、まあ…知ってるけんど…?」
「じゃ、じゃあ、教えて下さいっっ!何をしたら、死んじゃうほど痛いんですか?!?!?!?!」
「はあ?」
「だって、フランスさんがそう言ったんです!夜のオトモはすっごく痛いんだって…。スーさんが相手じゃ、僕死んじゃうかもって…!」
フィンランドの言葉に、ノルウェーはただひたすらポカンとしてしまう。
この白いキッチンアイルーが、スウェーデンにとって特別な存在だということは分かっていたが…、まさか、そんな関係になろうとしていたとは……。
「……おめ、スーの夜のオトモになったのけ?」
「そうなんです!僕が自分で、やるって言っちゃったんですよ!どうしましょう?!どうしたらいいんでしょう?!?!?!」
「んー………」
涙目になって詰め寄るフィンランドに、ノルウェーは顔を顰めて呻くと、やがてフウとため息を付いた。
「ま、だいじだっぺ。そう心配ぇすんな」
「だ、大丈夫って…!心配するなっていわれても、心配しちゃいますよぉ!」
「んー、まあ、最初はそんくれぇ痛ぇかもしんねぇけっど…そんだけでもねぇべし…。それより、おめぇがスーのこと好きなのかどうかのが問題だっぺ」
「え…?僕が?…って、そりゃ勿論、大好きですよ!」
「…んー…それは…主人だからだべ?そうでねぐて…」
「そうじゃなく…?」
きょとんとするフィンランドに、ノルウェーは微かに表情を和らげた。
「んだ、大事なことだべ。よっぐ考えてみろ」
「で、でもでも、夜になったらスーさん戻って来ちゃいますよぉ!そしたら僕…僕……」
「だいじだぁ。スーはおめの事好きだっぺよ。んだが、おめが嫌がることはしねぇべ」
「……あ…」
ぷすりと笑って諭すように言われたその言葉に、何故かドキリと鼓動が跳ねる。
それは、スウェーデンが自分を好きだと言われたからじゃない。
好きだから、嫌がることはしないだろうという方だ。

「フィンランド、おめがちゃーんとスーのこと好きだら、何も心配ぇねぇ。痛ぇのなんてちぃっとだけだ」

「………そうなの?」
「んだ。ちゃーんと好きなのわがったら、スーにそう言え。んだけっど、もう少し大きくなってからでええと思うけっどが…」
そう言って…水を呑んでくるなんて、ノルウェーはキッチンを出ていった。

痛いのは…ちょっとだけ……?
僕が…ちゃんとスーさんのこと好きなら………?

「…僕……ちゃんと…好きだよ……?」
ねえ?と自問して…。
後に残されたフィンランドは、きゅんと痛んだ胸を押さえた。
「………」
ノルウェーは、スウェーデンはフィンランドが好きだから、フィンランドの嫌がることはしないだろうと言った。
それはその通りだろうと、フィンランドも思う。
それに、スウェーデンは優しいから、フィンランドが嫌がったり怖がったりする事は、普通にしないに違いない。
だがフランスは、我慢はココロとカラダに良くないとも言った。
だからなのか…、どうも何かが引っかかるのは…。

僕……、スーさんに何か…我慢…させてるのかな…?

そう思うと、何故か胸がざわついて落ち着かない気分になる。
夜のオトモが何をするのか、結局分からないままだから、何を我慢するのかも分からない。
だが、それでも…死んでしまう程痛いなんて脅かしておきながら、フランスは「やめた方がいい」とは言わなかった。
ノルウェーにしてもだ。
痛いという事は否定しなかったが、それでも、気持ちが大事だと言ったり、大きくなってからでいいと言ったり…まるで推奨するかの様で……。

夜のオトモって…本当に何なんだろ……。
僕は痛いけど…スーさんは痛くない事で…、でも、僕もスーさんをちゃんと好きなら、痛いのはちょっとだけだって…。

「…全然、分かんないや……」
途方に暮れて呟いて、ハーッと溜息を付く。
「…でも…」

全然分かんないけど…夜のオトモは、愛とか好きとかが重要みたい……。
それって……好きなら、死んじゃう位痛いことだって我慢出来るって事なのかな…?
だって、好きだから我慢してくれるのなら、その逆だって…あるって事だもんね……?

そう思えば、そうかも知れないと、何だかすごく思って。
「そっか……じゃあ、僕だって…きっと我慢出来るよ!」
だって、スーさんの為だもん!と。
ぎゅうっと拳を握りしめ、よしっと気合いを入れる。
「スーさんのこと、ちゃんと好きだもん!だからきっと、大丈夫…大丈夫……うん、きっと…!」
大丈夫大丈夫と、暗示を掛ける様に何度も繰り返して。
「僕、立派に務めを果たしてみせるよ!」
フィンランドは誰にともなくそう宣言した。


 
アイルーキッチンで朝食を★ Episode00-2 > 4
 


「す、スーさんっ!」

夜…、食事も風呂も終えて、後は寝るばかりとなってから…。スウェーデンの部屋に入るなり、フィンランドは覚悟を決めて呼び掛けた。
「なした?」
「あ、あああのっ、よ、夜のオトモ!僕、よく分からないんですけど…、でも、頑張りますからっっっ!」
ぎゅっと握り締めた手を胸の前で組み、必死の様子でそう言うフィンランド。
「…ん…っど…」
スウェーデンは一瞬驚いたような顔をして…それからぷすりと笑った。
「そっが、だげんちょ、焦んねでえぇど」
「え……?」
言われた言葉に、今度はフィンランドの方が驚いて、トトトッと部屋を横切ると、ベッドの側まで駆け寄り、スウェーデンを見上げる。
「な、何でですか?」
「ん〜…、気持ちは嬉しいげっちょも、おめに怖ぇ思いさせたぐね」
そっと頭を撫でてくれる掌。
フィンランドを見つめる空色の瞳が優しい。
「もうちっと大きぐなっだら、よろしぐなぃ」
ちゅっと額に感じる口付け。
言い聞かせるみたいな仕草と言葉に、何故かきゅんっと胸を射す痛み。

やっぱり…スーさんは僕が大きくなるまで待ってくれる気なんだ……。
僕が怖いの、ちゃんと分かってくれてる…。
そうだよ、そうだよね、僕が死にそうに痛い事なんて、スーさんがするわけないよ。
でも………。

「………」
「フィン?」
俯いて黙ってしまったフィンランドに、スウェーデンが不思議そうな声を掛ける。
「…スーさんは……大丈夫ですか?」
「ん?」
「だって、我慢…するんでしょう?」
「ん、ん〜〜…まあ、だなぃ…」
「やっぱり!」
口ごもりながらも頷いたスウェーデンに、フィンランドは心配そうな顔で叫ぶ。
「我慢はココロとカラダに良くないって聞きました!僕、スーさんに身体に悪い事させられないです!それに、僕だって…スーさんが好きだから、だから、スーさんの為なら…きっと我慢出来ますっ!」
言いながら、何故かうるると潤んでしまう瞳。
「!」
一生懸命なフィンランドの言葉と顔に、スウェーデンはカッと瞳を大きく見開いて…。
「………ん…」
少しの間、思案するように瞳を彷徨わせ、やがて小さく頷いた。
「俺は……さすけね…」
「本当ですか?」
「ん」
「本当の本当に、本当ですか?」
食い下がるフィンランドに、スウェーデンは「んー…」と呻る。
それからフィンランドの瞳を覗き込み、スッとその顔を下げて……ちゅっと軽く…唇に……。
「!」
それは本当に軽い、触れるだけのキスだったが…唇の重なったその一瞬、ドキリと妙に大きく鼓動が跳ねた。
「………っ」
「ん、今は…これで十分だなぃ」
ぷすりと笑う空色の瞳。
フィンランドは呆然とその瞳を見上げて……。
それからカアッと真っ赤に顔を染め、視線を逸らす。

ひゃあああああ〜〜〜っっ?!?!?!?!
な、何だろ…今……、何か、すごい…ドキってなったよ。
ドキって…今もすごいドキドキしてるよ〜????

今まで、額や頬には沢山のキスをされていたけれど、唇へのキスは初めてだった。
だからかもしれない、こんなにも胸が騒ぐのは…。
「フィン?なじょした?」
黙り込んでしまったフィンランドの様子に、スウェーデンが不思議そうに尋ねてくる。
その顔が近付くのに、また鼓動が跳ねて…。
「フィン?」
「えっ、ええと…、あああ、あの、本当に…、これで…じゅうぶん、なんですか?」
「…不満?」
「えっ?」
きょとんとすれば、もう一度…ちゅっと唇が重なった。
「おひゃっ?!?!」
「ん、これで十分だなぃ」
目を丸くするフィンランドにそう言って、ぷすっと小さく笑うスウェーデン。
その表情が、どういうワケだか、いつもとは何かが少し違って見えたから……。
「そ…、そうですか……」
フィンランドは顔を俯かせて、モゴモゴと頷いた。

い……いいの…かな…。
よく、わからないけど……キスだけで…代わりになんて…?
でも、スーさんが…十分だって言うんだから……。
だから…いいんだよね……?
うん、今は……。

昼間、あんなにも怖くて不安で堪らなかったはずなのに、何故かホッとしているだけではない自分が不思議で……。
「スーさん、僕…早く大きくなりますからね!」
抱き上げる為に伸ばされた手に、ぎゅうっとしがみついてそう言えば、スウェーデンはぷすりと笑って、優しく頭を撫でてくれた。


かくして…。
フィンランドがスウェーデンの夜のオトモになって初めての夜は、いつものように優しく穏やかに…そして温々と…更けていったのだった。





+   +   +   +   +

とゆことで。
00-1のもろに続きになります。

ホントは、この後成長してちゃんと夜のオトモを果たす話も書いていたのですが、時間足りなくて削ったら、結局ソレは本編の方に持ち越してしまって、全然違くなってしまいましたorzorz
すれ違って、兄さんの酒場に入り浸るスーさんとか、ちょっと書いてて楽しい部分もあったんだけどな。。。。
いつか…機会があったら、手直しして使いたいなーとか思いますが。。。