フンドシ一枚あればいい。
Update : 2010/09/27
2010/08/29のグッコミにて、配付したSSです。



「スーさん、おかえ…って……、お、おひゃあああ〜〜〜〜っっっっ?!?!?!」

酒場から戻ったスウェーデンを見るなり、フィンランドは大きな目を更に大きくして叫んだ。
「な、な…ななな……っ…」
開いた口が塞がらないとはこのことか…。
だって、目の前にいるスウェーデンときたら、家を出た時に着ていた筈の装備は跡形もなく…、
代わりに身につけている物と言えば、股間を隠すただ一枚の布…そう、布…!!!!
鍛え抜かれた肉体に目映く映えるその白布には、黒く力強い筆文字で一言、
『漢』と、魂の叫びが刻まれている。
「何ってカッコしてるんですかぁーーーーっっ!!!!」
顔を覆うべきなのか、それとも、いっそグーで殴るべきなのか、
どうしていいのか分からずに、ただそう叫ぶが、スウェーデンの方は完全酔っ払いモードで、
へろ〜んと呑気そうに頷いた。
「ん〜、フィン〜、たでぇま〜」
「ちょ、スーさん!お、重…おひゃああ〜〜〜っっ」
ぎゅむーっと抱きついてきたスウェーデンにのしかかられ、
フィンランドは支えきることが出来なくて…。
そのまま、真後ろに倒れ込みそうになるが、そこは流石の旦那様。
べろんべろんに酔っぱらいながら、それでもフィンランドを潰しては大変とばかり、
途中でクルリと身体の位置を入れ替える。
「さすけね?」
ドスンと尻餅をつくように玄関先に座り込みながら、
抱えたままのフィンランドに尋ねるスウェーデン。
フィンランドは呆れたように溜め息をついた。
「それはボクのセリフですよ!」
「そ?」
「そうですよぉ、も〜、こんなに酔っぱらって……」
「ん、すまね」
「お酒を飲むのは構いませんけど、飲み過ぎはダメです!身体に悪いですよ!」
「んだなぃ」
唇を尖らせて咎めるフィンランドに、けれど、スウェーデンの方はスリスリなんて
頬をすり寄せたりして…。
「……スーさん、ちゃんと聞いてます?」
フィンランドが疑わしげに尋ねれば、彼は「ん」と頷き、
「おめ、本当…めんげぇなぃ…」
心底満足そうに呟いた。
「も、もーーーっ!全然聞いてないんだから!僕、酔っぱらいは嫌いですよ!」
ぷうっと頬を膨らまし、そう言ってみる。
いつもなら、途端にガァン!とショックを受けるスウェーデンだが、
今日はしれっとした顔で…。
「ん、俺ぁ酔ってなんかねぇど?」
酔っぱらいの定番なセリフを吐いた。
「酔ってるでしょーーっっ!こ、こんなカッコで帰ってきてぇ…!」
言いながら、ついつい下に目をやれば、スウェーデンもまた下へと目をやって…。
引き締まった腹の、その下を隠す白い布に、ああと小さく呟いた。
「これ…街で流行っでんだと。ど?」
「ど、ど?じゃないですよぉ!もう!いいからちゃんと服着て下さい!風邪引きますよ?!」
「…みんな似合うって言ってくれたんだげんぢょ…」

「………みんな?」

スウェーデンの一言に、ぴくりと頭のネコ耳が反応する。
「ん、今日の酒場は随分と賑やかで…、そういや、村の者も、他の者も、大勢来てたなぃ…」
「………」
不思議そうに頷くスウェーデンにフィンランドの表情が強ばる。

大陸でも名の知れたハンターであるスウェーデンが、
酒場でストリップまがいのことをしていたら、それは確かに人を呼ぶだろう。
しかも、彼一人ではなく、一緒に呑んでいただろうイギリスにプロイセンも、
同じ事をしたのだろうから、それは大した見物だったに違いない。

スーさんったら…、普段は肌なんか殆ど見せないのに…!

フィンランドは知っている。
スウェーデンが、男女を問わず、とても人気があることを。
モンスターの素材で創られた物々しい装備に身を包み、強くて大きくて寡黙な彼は、
近寄りがたい雰囲気で、そこがまた格好いいと言われている事を…。

きっと、いっぱいいろんな人が見たんだ…!

「なじょした?」
きゅっと唇を噛み締め、俯いてしまったフィンランドの顔を覗き込み、スウェーデンが尋ねる。
「…は、破廉恥です…!」
「そか?何が、日本みてぇだなぃ」
破廉恥と言えば、ぷすりと笑われ、フィンランドはぷううっと頬を膨らませた。
「笑い事じゃないですっ!スーさんは、全然分かってません!」
「フィン?」
不思議そうな彼が、何だかとても憎らしい。

スーさんってば、スーさんってば!
スーさんの身体を見たい人が居るって事、全然分かってないんだから!

「大体、酒場はお酒を飲む所でしょう?服を脱ぐ所じゃない筈です!」
「……ん〜、ほだなぃ…」
「それなのに、そんな格好で…!しかも、そのまま帰ってくるなんて…!」
「ん…、すまね…」
ぽこぽこと怒るフィンランドに、スウェーデンはションボリと肩を落とす。
「何でそんな事したんですか?」
「…んっど…、ノリ…?」
「ノリで服を脱ぐってどーゆー事ですか!スーさんは、もし僕が同じ事したらどうします?」
「んっだ事させねっっ!」
カッと目を見開き、とんでもないと叫ぶスウェーデンに、フィンランドは「ほら」と頷いた。
「自分はよくて僕はダメなんですか?」
「絶対ぇダメだ!おめが、フンドシ一枚でなんて…!」
言いながら、ぽわわんと考えたのだろう。
微妙な間が、二人の間に落ちる。
「…スーさん?」
お尻の下に感じる、スウェーデンの存在感。
「フィン…」
間近にある瞳が、じぃとフィンランドを見つめる。
熱く、熱く…、怖いくらいに熱く……。
「あ、あの…?」
ドキドキと鼓動が騒ぎ、フィンランドは僅かに視線を外した。

やだ、僕…怒ってたのに……。

「穿かね?」
「……へ?」
一瞬、意味が分からなくて、きょとんとしてしまう。
今、スウェーデンが言った一言は、何やらとても思いがけず…、
そして、あり得ないモノだったような…。

「穿いてみねぇが?」

「は?え、ちょ…な、何を?」
頭が理解を拒否している。
スウェーデンが何を言っているのか、何を望んでいるのか…、
分かっているが、分かりたくないのだ。
だが、次の瞬間、彼はどこからともなく、畳まれた何かを取り出した(本当にどこから…)
そしてそれをピラリと、フィンランドの鼻先で広げてみせる。
「もう一枚、土産に貰っだ」
青空と桜吹雪の模様が描かれた派手で可愛らしいソレは、
スウェーデンの穿くシンプルな白布とは随分と趣が違って見えるが、
それでもやっぱり間違いなく、漢布だ。
「な、なな、穿きませんよっ!」
何言ってるんですかぁあ!と叫び、フィンランドは慌ててスウェーデンの上から逃れようとした。
だが、そこはそれ、流石天下のG級ハンター様である。
酔っぱらいだろうが、装備がフンドシいっちょだろうが、アイルーの捕獲くらい、ワケはない。
とゆーことで。
「や、やです〜〜ぅっ!」
脱出失敗のフィンランドは、スウェーデンに押し倒されながら、情けない悲鳴を上げた。
「ん、ちっとだけ、なぃ」
「やだやだやだぁっっ!やめて下さいったらぁ〜」
「平気、何も心配いらね」
「平気とか心配とかじゃなく…あ、や、やぁああああ〜〜っっっ」
ぺろんと_かれるズボンと下着。
隠されていた秘部が外気と視線にさらされば、もう観念するほか無くて…。
フィンランドはぎゅうっと目を瞑った。
「んっど、まず二つに折っで…」
スウェーデンが小さく呟いて、漢布をフィンランドの身体の上に置く。
「ううう…」
「フィン、腰上げてくなんしょ」
「…うう〜…」
嫌なのだが、断ったところで、さして問題なく進みそうなので、
フィンランドは言われるままに少しばかり腰を浮かせた。
途端、スルリと布が股の間を通って…。
「あ…っ」
スウェーデンの手が触れるのに、ビクリと身が跳ねる。
だが、スウェーデンは特に何を言うでもなく、布を腰まで引き上げ、
そのまま前の方へと回して…。
「ひゃ、あ…、ん…っ…」
目を瞑っている上、次に何をされるのかが全く分からない状況だからこそ、
余計に、少しの刺激を強く感じてしまうのか…。

や、やだもう、こんな……。

スウェーデンの動きに反応してしまうのが恥ずかしくて、もどかしくて、
フィンランドは小さな啜り泣きを漏らした。
スウェーデンだから感じてしまうのだ。
こんな風に、ただ少し、手が触れるだけでも…。
だと言うのに、当の本人は漢布の方にばかり夢中な様子で…、
だからこそ、何だかすごく、悔しいような悲しいような、そんな気持ちになる。
「フィン」
クスンと鼻を啜れば、不意に名前を呼ばれて…、
フィンランドはスウェーデンの手が止まっていた事に気がついた。
「…スーさん?」
「すまね、俺ぁ…」
そう呟いて、ちゅうっと優しく落とされる口づけ…。
「スーさん…!」
分かってくれたんですね、とばかり、フィンランドが顔を輝かせれば…。
「…我慢、出来ね」
スウェーデンは僅かに顔を赤らめ、そう言った。
「え?」
「コイツ、穿かせる間はっで思っどったけんぢょ…」
「…す、スーさん…?」
ハッと気付けば、スウェーデンが唯一身につけている漢布の、
『漢』の部分が随分と盛り上がって見えるようで…。
「…っ…!」
思わずゴクリと喉が鳴る。

た…、確かに……似合ってる…の、かも……。
スーさんの身体……、格好いいし……。

自身の上を覆う、スウェーデンの身体を眺め、フィンランドは改めてそう思った。

そうだよ…、最初から、僕にだけ見せてくれるんだったら、僕だって……。

そうだ、そうだったのだと、フィンランドは思った。
2人きりの時ならば、自分だけが見るのならば、フンドシだろうが、裸だろうが、
構いはしないのだ。
他の人間が、しかも、スウェーデンに特別な感情を寄せている人間が、
その肌を見たと言う事が、どうにも引っかかっているのである。

僕ってホント、独占欲が強いっていうか……。

「フィン、えぇが?」
フィンランドが悶々と考えていれば、スウェーデンがそう尋ねてきた。
我慢出来ないと言いながら、それでも許可を得ようとするスウェーデンが可笑しい。
フィンランドはコクリと小さく頷いて、スウェーデンの首に腕を回した。
ぎゅうっと抱きしめれば、スウェーデンの温もりが直に伝わって……
何だかホワリと胸が熱くなる。

僕のものだもん。
スーさんがたとえ、お外で裸になったって。
それをみんなが見たって、こーゆー事出来るのは、僕だけだもん。

だから、よしとしよう。
とりあえず、そんな風に納得する。
そして、
「…スーさん、似合ってますよ…それ…」
耳元にそう囁けば、
「…そ?」
返った声には、僅かに嬉しさが滲んでいた。


+   +   +   +   +


翌朝…。

「いいですか?今日という今日は言わせて頂きます」

酒場から、いつになく大きな日本の声がして…。
その入り口には黒山の人だかりが出来ていた。
「なじょした?」
入り口の脇からコソコソと様子を覗っているプロイセンを見つけ、
スウェーデンは近づくとコソリと尋ねる。
「あ、スウェーデン!日本が怒っちまってよぉ…」
大変なんだぜ!と言われるまま、コッソリと酒場の中を覗えば、
カウンター前の床に正座しているイギリスと、その前で腕を組み仁王立ちしている日本の姿…。

「そもそも、酒場というのはお酒を嗜む所でしょう?服を脱ぐ所ではないんですよ?
なのにあなた方と来たら、酔えば必ず服を脱いで…!
フンドシというのは下着なんですよ?あなた方は人前で下着一枚になっていたんです!
破廉恥にも程があります!」

「わ、悪かったと思ってる…」
怒り心頭の日本を前に、小さく小さく身を縮め、イギリスがモソモソと謝る。
「本当に思っているんですか?大体、何でそんな事するんですか?」
「…それはその、えっと…、ノリ…?」
「ノリで服を脱ぐってどーゆー事ですか!」
ピシャーーーン☆と、真っ直ぐイギリスに落ちる雷が見えた気がして、
スウェーデンとプロイセンは思わず身を竦めた。
「ひえ〜、おっかね〜…普段おとなしい奴が怒ると、マジで怖ぇよな…」
「…ん…」
「お前は?フィンランドに怒られたんじゃねぇの?あのまま帰っちまってよぉ…」
「ん、怒られたけっぢょ」
「けど?」
「…似合うっで言われた」
ポ…と、僅かに頬を染め、嬉しげに言うスウェーデンを、一瞬絶句して見つめ、
「…か〜〜っったく、ご馳走さん!」
プロイセンはアホらしいとばかり、肩を竦めた。
そして、もう一度、酒場の中に目を戻す。
「で、どうする?」
酒場でフンドシいっちょになり、バカ騒ぎをしたのはイギリスだけではないのだ。
「んだなぃ」
コクリと頷くスウェーデン。
「だよなぁ」
プロイセンもまた、頷いて。

そして、二人は酒場へと入っていった。
同罪の友と、共に怒られる為に……。

かくして、後に『漢布珍事件』として知られるこの事件は、友情により幕を下ろしたのであった☆


ちゃんちゃん♪



+   +   +   +   +


てことで。
夏という季節はどうしてこう、アホな話ばかり思いついてしまうんでしょうか…。
(去年は目隠しお風呂エチだった……)

てか、フンドシはホントに装備としてあるのです♪<モンハン
実際に書かれている文字は『ファ●通』なんですけどね(^^
ええ、勿論、作って穿かせて砂漠やら雪山やらに行かせましたとも!
太腿が超眩しいのですよ〜♪(爆)
次回(MHP3)はもっといろいろなネタ装備があればいいのになぁとか、コッソリ思いつつ…って、
そんな話はどうでもよく…。

ここまで読んで下さった方には、ありがとうございました(^▽^)
スーさんにフンドシは、本当に似合うと思ってるナナセでした〜☆