スーさんのオトメ★1 >
 
1.




スウェーデン国にある、世界で唯一のオトメ養成学園ガルデローベ…。
その広大な敷地の最奥にある水晶宮は、扇のような形をした一風変わった建物で、学園に於ける様々な式典の会場となっている。

今日、その水晶宮では、一人の生徒が卒業を待たずしてマイスターオトメとなるべく、叙任式が執り行われていた。

生徒の名は、ティノ・ヴァイナマイネン…。
パール生の中で成績上位3名のみがなれる『トリアス』の一人で、そのマスターとなる人物は、ここスウェーデン国の王、ベールヴァルド…その人だった。
先代の王が亡くなり、ベールヴァルドが戴冠して既に3年…。
その間、大臣達のいかな進言をも断り続け、オトメとの契約をして来なかった彼だが、ここ最近の世界情勢の不安定さに、ついに決心を固めたのか…、
在学中の生徒に白羽の矢を立て、この度、契約を交わす運びとなったのである。

と、まあ…表向きはそんな話が通っているが…。

生徒達の間では、ベールヴァルドとティノは幼い日に約束を交わし、どちらもがそれを守って…ついにマスターとそのマイスターオトメとして結ばれる日が来たのだと……、
そんなロマンスめいた噂の方が信じられていた。

まあ、その噂の真偽はともかくとして。

水晶宮の入り口から奥へ、真っ直ぐに延びた赤い絨毯…。
今まさに、そこを一歩ずつ、ゆっくりと…。
ティノはベールヴァルドの待つ祭壇へ歩いているのだった。
手にした筺には指輪が一つ。
白銀の台座に収まる青い宝石は、ティノの左耳のピアスに嵌っているのと同じラズーライトだ。
スウェーデン王家に伝わるこの宝石が、これから二人の命を繋ぐ契約の石である。
壇上に上がったティノが、ベールヴァルドの前で跪けば、

「清恋の天藍石…マイスター、ティノ・ヴァイナマイネン」

ガルデローベの学園長バッシュが、厳かにティノの名を呼んだ。
『清恋の天藍石』というのが、この石の持つ名前である。
これから先、ティノはこの石の名をも継ぐ事になるのだ。

「汝は、この者、ベールヴァルド・オキセンスシェルナを主とし、その身を守り、命を共にし、オトメとして己の全てを捧げることを誓うか?」

視線を上げれば、じっと見つめるベールヴァルドの空色の瞳。
いつものように厳しく険しく見えるその瞳は、けれど、何処か少しだけ…いつもとは違うように見えて…。
緊張してるのかな、なんて思えば、こんな時だというのに少し面白いような気がする。
「はい」
ティノがシッカリと頷けば、バッシュもまた小さく頷いた。
「では、汝の授かりしその契約の石を、主へと捧げよ」
「はい」

僕…、ついにスーさんのオトメになるんだ……!

そんな感慨が、今更ながら胸に迫る。
ティノは震える手で慎重に、筺の中から指輪を取り出した。
ベールヴァルドの差し出した左手を取り、その中指にそろそろと指輪を通す。
『スーさんは絶対、僕が守ってみせますからね!』と、そんな気持ちを込めて小さく微笑めば、ベールヴァルドの表情が僅かに和らいだ気がした。

「フィン、おめの力…貸してくなんしょ」

「…ええ、勿論、喜んで…!」
本当ならば「イエス、マスター」と答えるべきだろう。
だが、ベールヴァルドはティノではなくフィンと…いつもの名で呼び掛けたから…。
ティノは頭を垂れ、指輪の石にキスを落とした。
キラリ、キラリと輝くそれぞれの石。
これで契約は成立だ。
わあっと巻き起こる歓声と拍手。

そう、これで、正式に…ティノはスウェーデン国王ベールヴァルド・オキセンスシェルナの
マイスターオトメとなった。


子供の頃の約束が、子供の頃からの夢が、ついに、本当に叶ったのだ。



 
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 ・
 ・
 ・

「………って。ドキドキワクワクで、幸せいっぱい夢いっぱいな感じだったのになぁ………」

あーあ…と呟いて、ティノはベッドの上で寝返りを打った。
彼のマスターであるベールヴァルドは、隣の部屋で執務に励んでいる。
本来ならば、もっと側に…せめて同じ室内に控えて、政務の手伝いや警護に当たるべきなのだろうが…。
何故か当の本人が「ええがら」なんて…それを望まないから…。
「僕…なーんにも役に立ってないよね……」
そう呟けば、何とも情けない気持ちになって、は〜…と溜め息ばかりが漏れてしまう。
マイスターオトメは、強大な力そのものであるから、役に立っていないのは、それだけ平和だと言うことで…、良いことなのだろう。
だが、新米マイスターであり『ベールヴァルドのオトメになって、立派に務めを果たす!』というのが子供の頃からの夢だったティノにしてみれば、本当にこれでいいのだろうか…と、自分の存在意義を考えちゃったりしてしまって…。
三食昼寝付き・仕事なしなんて、人が聞いたら羨む待遇なのだろうが…。

これでも、学校でいろいろ習って…何でも出来る気でいたんだけどな…。
でも、実際はスーさんのが全然、何でも出来ちゃうし…やっちゃうし…やってくれちゃうし……。
メイドさん達も優秀だし…。
うう、僕ってホントに何の役にも立ってない………。
このままじゃ、予算の関係でクビ……とか……!
うわああ、ホントにありそうだよ〜!!!

「フィン?」
「どうしよう…何か僕に出来る事って……」
「フィン、寝でんの?」
「何かないのか〜何か〜…って、おひゃあっ!す、スーさんっっっっ!」
ぼんやりと考え事に耽っていたティノは、にょきっと視界に現れたベールヴァルドの顔に、思いっきり跳ね起きた。
途端、ガツンっと…。
頭に感じる衝撃と痛み。
星の舞った視界。
ズン…と、重い音が続いて……。
「ったぁあ〜〜っっ☆ってゆーか、スーさん!あわわっ!やだうそ!ごめんなさいっ!」
ハッと気付けば、ベッド脇で顎を抑えて屈んでいるベールヴァルド。
あわわわと大慌てでベッドを降り、ティノはどうしようどうしようとオロオロしてしまう。
「えっと、み、水!そうだ、きっと、冷やした方が…!」
「…………」
だが、立ち上がったティノの手をベールヴァルドがガシッと掴んだ。
「スーさん?」
ギンッと向けられる視線が怖すぎる。
それはもう、大分見慣れて来たティノですら、ヒッと小さく息を呑むほどのド迫力。
「す…、す、すいま…せ……っ」
カタカタ小さく震えてしまう自分を心の中で叱りながら、ティノは懸命に謝罪の言葉を口にした。

ど、どうしようどうしようどうしよう。
怒られる…っ、じゃなくて、ホントにクビにされちゃうかもっっ!
僕まだ全っ然、何の役にも立ってなくて…なのになのに、こんな事…っ!

泣いている場合じゃないと思うのだが、恐怖と混乱と情けなさで、どうしても涙が滲んでくる。
「あ、ああ、あのぅっ、わ、わざとじゃ…ないんです…っ」
ベールヴァルドが緩く首を振る。
ズイと伸びる手。
ぶたれるのかと身を竦めれば、その手は驚くほど優しく、ティノの頭を撫でてくれた。
「平気」
「ふえ…?」
「こんぐれぇ、痛ぐね」
だから泣くなと…、綺麗な空色の瞳がそう言っているように見えて…。
「ひう…っ」
グスっと鼻を啜れば、ベールヴァルドがぷすと小さく笑った。
「おめ、変わんねぇなぃ」
「うう…、す、すみません、ホント、そそっかしいの全然変わらなくて……」
「んでね。泣き虫の方」
「え…っ」
殆ど表情の変わらないベールヴァルドにしては珍しく、面白がっていると分かるような顔で…、
手はよしよしとティノの頭を撫で続けている。
「な、泣き虫じゃないですよっ!」
「そ?」
「そーですっ!これは、何てゆーか…その、ビックリしてですね…」
ぷうっと膨れるティノの頭を、最後はポンポンと宥めるように軽く叩いて、ベールヴァルドは手を離した。
そして、ベッドから離れると、すいっと窓の方を見やる。

本日の天候は快晴。
空は綺麗に澄み渡り、白い雲がプカプカ浮かんで…陽射しは暖かそうだ。
ベールヴァルドの視線が逸れている間に、ティノはゴシゴシと顔を拭って…、向こうの壁に掛かった鏡をチラリと見やった。
泣いたせいで鼻の頭が赤いが、まあ、その内に収まるだろう。

僕ってホントそそっかしい……。
先生達にも注意するようにって言われてたのに……。
ホント、気を付けなきゃ…。

胸の中でプチ反省をしながら、それでも、クビにならなくて良かった…なんて思ったりして。
ティノが、はあ…とどっちつかずの溜め息を落とせば、
「…散歩行っけど…、おめは?」
タイミングでも計っていたのか…ベールヴァルドがそう声を掛けた。



 
スーさんのオトメ★1 >
 
じいい、じいいと。
側にいればいつでも、突き刺さるように感じるベールヴァルドの視線。
昔からのことだが、いい加減飽きたりしないのだろうか…。
一度聞いてみたい気もするが、答えが何だか怖い気もする。
それに、とティノは内心一人ごちた。

段々…、慣れて来ちゃったんだよね……。
そりゃ、オトメになってから、四六時中一緒にいるんだもん。
慣れなきゃって感じだけど…。
それより……。

「ねえ、スーさん…?」
「ん?」
「僕に出来ること…何かないですか?」
思い切って尋ねてみれば、ベールヴァルドは不思議そうに首を傾げた。
「なして?」
「だって僕、毎日、殆ど何もしてなくて…。このままでいいのかな、って…」
「そ?」
「そーですよ!僕は貴方のオトメで、お客様じゃないんですから!何か仕事を…」
「…おめは…おめにしか出来ねごとしてんでねぇの」
ティノの言葉を遮り、ベールヴァルドは事も無げに言う。
「それは…、戦争の…抑止力になってるって意味ですか?」
「ん」
コクリと頷くベールヴァルドに、ティノはきゅっと唇を噛み締めた。
それは、確かにそうだろう。
オトメは超強力な兵器みたいなものだ。
各国がオトメを持っているからこそ、そしてそのオトメが国王と命を共にしているからこそ、戦争が起こるのを防ぐことが出来ているのだ。
だが、それはマイスターオトメならば、誰もが同じ…。
ティノが聞いているのは、もっと自分だけに出来るような…、それでベールヴァルドの役に立つようなことなのだが……。

何か、もっとちゃんと、スーさんに必要って思われる事がしたいんだけどな…。
このままじゃ、もう要らないって思われそうだもん…。
スーさんがそう思わなくても、大臣さん達とかにさ……。

折角、夢を叶えてベールヴァルドのオトメになったのに、何も出来ないままクビになったりしたら…と思えば、どうしても不安で憂鬱で…。
「浮かね顔しでっごと…」
「あ…スミマセン、ちょっといろいろ…考えちゃって……」
あははと誤魔化すように笑うティノを、ベールヴァルドは暫くの間黙って見つめて…。
「……そだに…焦んねでも…」
ポツリとそう言った。
「え?」
それは小さな呟きだったから、ティノの耳には届かなかったのだろう。
紫水晶みたいな瞳が、パチクリと瞬く。
ベールヴァルドは、特に何も答えず、スイと視線を外した。
ティノが悩んでいると思えば、チクリと胸が痛んだ。

側にいると仕事になんねなんて…、いい加減、何とかしねぇとなぃ…。

チラリと見れば、また視線を落として考え込んでいるティノ。
沈んだその表情すら、見れば『めんげぇ…』と思ってしまって…。
ついつい、見とれてしまう。
今の今、いい加減何とかしないと…なんて思った筈なのに…。

オトメの仕事は、何も戦いだけではない。

オトメはあらゆる面に於いてマスターの望みを叶えるべく、様々な教育を受けている。
マスターの相談役となり、政治に関わったり、身の回りの世話をしたり、その役目はマスターの望み次第で様々なのだ。
ティノはガルデローベでトリアスを務めていた位に優秀だったのだから、きっと良い相談相手になるだろう。
それは最初から分かっていた。
だが、ティノが側にいると、ベールヴァルドは仕事に集中出来ないのだ。
情けない話だと思うが、分かっていてもどうにもならないのだから仕方がない。
「…スーさん」
ふいに、ティノが茂みの向こうを見据えて、固い声を出した。
「なじょした?」
「誰か来ます」
成る程、ティノの言葉の通り、誰かがこちらに向かって走ってくるような音が、段々と近付いてくる。
そして、

「陛下!東庭園にスレイブが現れましたっ!」

ガサリと、茂みを割って駆け出してきたのは一人の兵士で、彼はゼイゼイと肩で息を付くと、その場に片膝を付いた。


 
スーさんのオトメ★1 >

「スレイブ?!」
スレイブとは、巨大怪獣型の遠隔操作兵器だ。
生物のようなロボットのようなそれは、失われた先時代の科学文明を信奉する組織のメンバーが操る物だが…。
「…なして…庭に…?」
しかも東…と、訝しげに呟くベールヴァルド。
国王であるベールヴァルドの命を狙って…というのなら、今居るこの場所から最も近いのは、東ではなく南の庭園だ。
「スーさん!僕、行きます!」
表情を険しくして、記憶を探っているベールヴァルドに、ティノがそう宣言する。
「フィン…」
「スーさんは避難して下さい!さあ、認証を!」
ついに自分の出番が来た!とばかり、俄然張り切るティノ。
だが、表情を明るくしたティノとは裏腹に、ベールヴァルドの表情は暗く険しくなって…。
ついに、この時が来たか…と、胸の内で苦い呟きを漏らした。

そう、ティノにマテリアライズの認証をし、彼を戦闘に…危険に赴かせなければならない時が……。

ティノとの契約自体は、本気で嬉しかった。
子供の頃からの約束であったし、何よりずっと一緒にいたいと願っていたのだから。
ティノを他の誰にも渡すつもりはなかった。

だが、オトメは闘うもの…。

分かってはいても、自分の命令で、ティノをみすみす危険にさらさなければならないのは、やはり気が進まなくて…。
今まで…学園在籍中にも、ローブを纏っての戦闘経験があることは知っている。
ティノが強く、賢く、優秀なオトメであることも…。

それでも……。
ティノを闘わせるくらいなら、いっそ自分が……なんて思ってしまうから…。

わあわあと、賑やかな声や音が移動してくる。
どうやら、スレイブがこちらに移動してきているようだった。
「スーさん!こっちに来ますよ!」
迷っているベールヴァルドをけしかけるように、ティノが声を上げる。
「陛下!避難を!」
兵士も焦りの声を上げて…二人の視線が、自分に集まるのを感じながら…。

仕方ねぇなぃ……。

「……ケガ…しねえでくなんしょ 」
そう言えば、ニコッと笑うティノ。
「はい、気を付けます!スーさんに痛い思いはさせませんよ!」
ベールヴァルドは「そうでねぐて…」と顔を顰めた。
「さ、早く!」
「ん」
スイと伸ばされた指が、顎を掬うように軽く上げて、顔が近付く。

「ティノ・ヴァイナマイネン、清恋の天藍石を持つ我がオトメよ。我が名に於いて、汝の力を解放する」

耳元で認証の言葉が囁かれ、続けてGEM越しに感じる、チュッと軽い口付け…。
それにドキリと鼓動が跳ねて…、体内のナノマシンが一斉にざわめき出す。
それはまるで、もう一人の自分が目覚めるような、そんな感覚…。

「マテリアライズ!」

ティノが高らかにそう宣言すれば、キラリと輝いた清恋の天藍石に認証コードが走り、ナノマシンが一気に高次物質化した。
マイスター服が輝き、ローブと呼ばれる戦闘服に姿を変えて、ティノの身体を覆う。
久しぶりのローブ着用…。
クルリと回って、ビシリとポーズを決めて。
「よし!行って来ますね、スーさん!」
清恋のローブを身に纏ったティノは、ベールヴァルドを振り返り、ニコッと微笑んだ。
「ん」
フワと浮かんで、そのまま空へと舞い上がるティノ。
「オトメだ!」「王のオトメが闘うぞ!」と、ティノの姿を目にした者が口々に叫ぶのが聞こえてくる。
ガルデローベのあるこの国ですら、マイスターオトメが闘う姿を目撃するのは稀なのだ。
そう、世界大戦の後はずっと平和な時代が続いたから…。
基本的には一般市民は皆、平和ボケしていて…。
庭の向こうから、わあと歓声が響いてくるのに、ベールヴァルドは顔を顰めた。
オトメの闘う姿は、その優美さ、華麗さから『舞闘』と呼ばれる。
ティノの舞闘を見たいとも思うが……、もし、万が一にも苦戦するようなことがあれば、それこそ心臓発作でも起こしかねない。

ずっと…、闘うごとねく、ただ王の側で花さ添えるだけのオトメも、沢山居だのになぁ…。

ティノにも、そうさせたかったと、苦く思いながら。
それでも、スレイブを倒して晴れ晴れとした笑顔で戻ってくるティノを見れば、これでいいのかとも思って……。
「スーさぁん!やっつけましたよ!」
そう言って大きく手を振るティノに、手を振り返しながら、ベールヴァルドは複雑な思いで、こっそりと溜め息を吐くのだった。



+   +   +   +   +

とゆことで。
実はこれ、叙任式と、マテリアライズする際の認証が書きたかっただけの話だったりします(ヲイ)

最近、ひょんな事から『舞-乙HiME(と書いて、マイオトメと読む。ちなみに、私はまだアニメしか見た事ないです)』を見まして。
あら可愛らしい…なんて思ってたんですが、
13話 『茜色の空に…』を見たら、叙任式が結婚式のようだ!!!!ってのにときめき、
スーさんとフィンでこーゆーのいいかもーvvとか、ユメ見ちゃったのでした☆

だって、命を共にするんだぜ!何それ究極ラブくない?!
そして、スーさんに「我がオトメ」って言わせたかった!!!とゆー(笑)
フィンはホントにオトメって言葉が違和感ないくらい可愛いですがvvv
我がオトメだよ!我が!!!!スーさん格好いいvvvvvv(ヲイ)

つか、身内に 「スーさんだと『オドメ』って訛るんじゃない?」 って言われましたが、そーゆー決められた文句はちゃんと標準語で言えるもん!多分。。。と、原作(マイオトメの)通りにしました(笑)
いや、ちょっとだけ、

「ティノ・ヴァイナマイネン、清恋の天藍石さ持つ我がオドメよ、我が名に於いで、汝の力さ解放すんべ」

ってのを想像しましたが。。。
(ちなみに、これでもいいかも…vvポッvvとか思ったんですが……わたしだけですか…)


てか、スーさんはフィンに闘わせるくらいなら、自分が出てっちゃうとかありそうだと思うんで、そんな話も書いてあったりします。
後少し手直ししたら、載せられるかと思いますが、その前に学園版の方かな…。

ガルデローベの話は、いろんなキャラが出てくるので、書いていて自分がとっても楽しいです♪
アプしたらまたお付き合い頂けると嬉しいです〜☆(^v^)


※ リストページの上部にも書いてありますが、スーさんの福島弁はサッパリ分かりませんorz
 フィーリングで書いてるので、フィーリングで読んでやって下さい。




 
スーさんのオトメ★2 >
※エロ有りなので、苦手な方はお気を付け下さい。
※続いてます



ティノがベールヴァルドのオトメとなって早数ヶ月………。


世界には不穏な空気が重く重く蔓延していた。
スレイブの出現も多くなり、オトメ達の出番も増えて…各国の関係が微妙に軋み始めていた折り…。
何を思ったのか、ロシアのオトメがティノに闘いを挑んできた。

「さあ、出てきなさい!清恋の天藍石!私と勝負するのです!」

世界大戦後、国同士の全面戦争は影を潜め、王のマイスターオトメによる決闘で勝敗を付ける『代理戦争』が主流になっている。
だから今、ティノに勝負を挑んでいるのは、ロシア皇帝のマイスターオトメ『深淵の翡翠』こと、ナターリヤ・アルロフスカヤ…その人で……。

「…深淵の翡翠…、これは何の真似ですか?」

射出台に立ったティノは、いつもの温厚な彼からは想像も付かないような厳しい顔で、ナターリヤを睨んだ。
「勿論、兄さんの望みです」
ナターリヤは長い髪をサラリと梳いて、事も無げに言う。
「つまり、ロシアの皇帝陛下は我がスウェーデンと戦争を望んでいる、と?」
「黙って従うなら、その命は助けてもいいとのことです」
「勝手なこと言わないで下さい!」
ティノの叫びに呼応するように、その手に現れる二門式トンファー…。
それが、清恋の天藍石のエレメント(武器)である。
「…交渉、決裂ですか」
対するナターリヤの、深淵の翡翠のエレメントは、金属の鞭…。
ビュンッと、ナターリヤが手にした鞭を虚空に振るえば、風が刃となってティノの髪を薙いだ。
「始めに言っておきますが、ロシアに手加減なんてサービスはありませんから…全力で行きますよ」
「望むところです。僕は絶対、負けませんよ!」
オトメの命はマスターの命。
戦いに敗れ、死ぬようなことがあれば、マスターも同時に死んでしまうのだ。
だからこそ、真剣で…。
一触即発の空気。
高まる緊張。


やっぱ…、闘わせらんね…。


「フィン」
ふいに掛けられた声に驚き、ティノが背後を振り返れば、いつの間に上がってきたのか、ベールヴァルドが射出台に上がって来ていた。
「えっ?ちょっ、ちょっとスーさんっっ?!何でこんな所に居るんですかっっ?!?!」
「こっちゃこせ」
来い来いと手で示され、ティノは何事かと慌てて駆け寄る。
「どうしたんですか?スーさん?」
「やめだ。戻っぞ」
「は?」
思いもよらぬその言葉に、目が点になるティノ。
パチクリと瞬きをするその瞳をジッと見つめて、
「戻っぞ」
ベールヴァルドはもう一度そう言った。
「え、ええええええ〜〜〜っっっ?!?!?!ちょっ、な、何言ってんですか!そんなの、今更無理…」
「おめ、闘いてぇのか?」
「え、いや、それは…!でも…っ」
スレイブ相手ならいざ知らず、オトメ同士の戦闘など、誰だとて気が進む筈がない。
だって、オトメはみんな、かつてガルデローベで学んだ先輩であり、後輩であり、誰かの友人なのだ。
だが、それでも、マスターの命を預かり、その命令に従うことがオトメの使命であり、誉れであり、幸せであると叩き込まれているから…。
「だって…」
「フィン」
行くぞとベールヴァルドが言いかけた時…。
ドンッと、空気が弾けるような音がした。
ビュッと、空気の裂けるような音が…。
「逃がさない!」
聞こえたのはナターリヤの声。
鞭が呻り、二人に襲いかかる。
「危ないっ!」
ティノは慌ててベールヴァルドの前に出た。
咄嗟に張ったシールドで鞭の攻撃を交わし、続けて向かってきたナターリヤに反撃をしようとして……けれど、その腕がふいに強く引かれたから…。
「え…っ?」
それはベールヴァルドの手だった。
驚いたティノを一気に引き寄せ、身体の位置を変えて、ベールヴァルドがナターリヤを迎え撃つ。
「なっ?!」
まさか、生身の人間が…しかも、一国の王がオトメの前に出てくるなどとは思ってもみなかったのだろう。
ナターリヤの攻撃はベールヴァルドの肩を捉えただけで。
驚きが産んだその一瞬の躊躇を、ベールヴァルドは見逃さなかった。
いつの間にやら抜かれていた剣が、ナターリヤの喉元にスッと突き付けられる。
「!」
「帰ぇれ」
「く…っ…」
睨み合う二人の剣幕に、ティノは息をすることすら忘れて…。
永遠とも思える数分…否、実際には一分に満たない時間だったかも知れない。

『ナターリヤ、戻っておいで』

ナターリヤの無線に響いたロシア皇帝イヴァンの声が、二人にも聞こえる。
その指令に、一瞬目を大きく見開いたものの、
「……はい、お兄さま…」
ナターリヤはコクリと頷くと、いともあっさりとその場から立ち去った。

「は……はぁあ〜〜〜〜……」

その姿が、豆粒ほどまで小さくなると、ティノはヘナヘナとその場にへたり込んだ。
すると、今までは気にならなかった痛みを、急に感じ始めて…。
右肩がズキズキするのに、ハッとする。
「スーさん!ケガっ!ケガしてますよっ!」
「ん…」
慌てて主の姿を確認すれば、ベールヴァルドは僅かに振り返って、小さく口を開いた。

『すまね…、おめに、痛ぇ思いさせちまったなぃ…』

そう言うつもりだった。
言ったつもりだった。
だが、それは声にはならず、ただ空気が漏れて…。
視界がぐらりと傾いた。

ああ……いい天気…だな…ぃ…………。

晴天に、プカプカ浮かぶ白い雲。
駆け寄ってきたティノの顔が、その空を隠し、その顔も歪んで、霞んで……。
そして、フッと全てが消えて…。
「スーさんっ!スーーーさぁああーーんっっ!!!!」
薄れゆく意識の中、悲鳴のようなティノの声だけが、長く長く尾を引いて、暫くの間響いていた。



 
スーさんのオトメ★2 >



ひっ、ひっ、と…誰かが苦しげに泣いている。

生い茂る草をかき分ければ、乱れ咲く花の向こう…。
古びた石のベンチに座り、泣いているのは小さなティノで…。

ああ、昔の夢だと、ベールヴァルドは思った。
初めて出会った時の夢。

そう、あの時も、ティノは泣いていたのだ。


「…泣がね…で……」


ポツリと、呟いた自分の声で意識が覚醒する。
「…すー…さん…?」
すぐ側から、ハッとしたようなティノ声が聞こえた。
目を開ければ、ぼやけた視界にティノの顔を見て…。

……いつ見っでも、めんげぇなぃ…。

ぽわんと幸せな気持ちになる。
が、
「スーさんっっ!スーさぁんっっ!!!」
「?!」
がばちょと抱きつかれ、途端、右肩に走った痛みに思わず呻いた。
「あ、あああっ!ご、ごめんなさいっ!」
慌ててバッと距離を取るティノ。
その視線が肩に向き、辛そうに歪むのを見て、ベールヴァルドは首を傾げる。
「フィン、なじょした?」
聞きながら、その視線を追って自分の右肩を見やれば、そこには真っ白な包帯がグルグルと巻かれていて…。
ベールヴァルドはハッとしたように目を見開き、ティノの顔を覗き込んだ。
「おめ、さすけねぇが?」
大丈夫かと尋ねられ、ティノの方が目を丸くする。
それからすぐ、顔をくしゃくしゃにして…。
「…もう!スーさんのバカ!バカバカバカ!」
ぼろぼろと涙を零され、ベールヴァルドはぎょっとしてしまう。
「すまね、痛がったか?ん?な、泣かねでくなんしょ」
困ったように、宥めるように言われ、ティノはグスグスと鼻を鳴らしながら、ベールヴァルドを睨んだ。
「………スーさん、僕が何で怒ってるか、絶対分かってないでしょ…」
いかにも不満げに唇を尖らしたその顔が、また何とも言えずに愛らしいのだが、どうも…そんな呑気なことを思っている場合ではないらしい。

怒っでんのか……。

ベールヴァルドは少しの間、心当たりを探ってから、首を傾げた。
「…ケガ?」
「それもあります…けど…!」
ぎゅっと、ティノの手がシーツを握り締める。
その手が震えているのに気付き、ベールヴァルドは困ったようにティノを見つめた。
「どうして…、どうして僕に任せてくれなかったんですか?」
「ん…」
「何で…、あんな無茶なこと…するんですか?」
生身の人間が、マテリアライズしているオトメに立ち向かうなど…。
しかも、同じくマテリアライズしている自分が居たのに、それを庇ってなど…。
普通には考えられないことだ。
「攻撃が逸れなかったら、どうするつもりだったんですか?」
心配に取って代わった怒りが、ティノの口から責める言葉を吐き出させる。
猛烈に腹が立っていた。
そして、同時に悔しくて、情けなくて、悲しくて…。
「あなたはこの国の王様なんですよ?なのに、何を考えてあんな…っ、あんな危険なこと…!闘うのは僕の仕事なのに…!スーさんを守るのが、僕の役目なのに…!その僕を庇ってケガするなんて…っっ!」
「フィン…、落ち着け…、な?」
宥めようと伸ばした手を払われる。
「…スーさん、最初に言ったじゃないですか…!契約の時に……僕の力を貸してくれって…!僕、あれ…嬉しかったのに……!」
「フィン…」
切なくて悲しくて…、ボロボロと涙をこぼしながら言うティノに、ベールヴァルドの胸がズキズキと痛んだ。

誰より好きで、誰より笑っていて欲しい人が、自分のせいで傷つき、泣いているのだ。

「覚悟なんて、オトメになるって決めた時から出来てるんですよ?誰と闘うことになっても、僕は…スーさんの為なら闘えます!なのに…、スーさんは、僕のこと全然信用してくれてないんですね…」
「そ、そっだらことねぇ!」
「だったら!僕を、ちゃんと使って下さいよ…!」
「………すまね…」
謝られると、余計に辛くて…ティノはきゅっと唇を噛み締めた。
「…酷いです、こんなの」
「…だげんちょも…、おめに闘わせんのぁ……」
出来ね…と首を振るベールヴァルド。
「何で…っ!」
「おめが好きだから」
「………!」
大きく見開かれたアメジストのような瞳。

それは、聞きたかった言葉だった。
それは、知りたかった気持ちだった。

いつだって、ハッキリ言われたことはなかったから……。

「スーさん…」
聞きたかった言葉を聞いて、知りたかった気持ちを知って、嬉しくて堪らない筈なのに…、状況が状況だから、素直に喜べない。
切なげにきゅっと唇を噛むティノ。
ベールヴァルドも切なげに顔を歪めた。
「昔がらずっとだ…。…だから、そんなおめぇに、危ねぇ事させたくね…させらんねぇ…。本当は、スレイブと闘わせんのも、させたくねんだげっちょ…」
「そんな…!それじゃあ何のためのオトメなんですか?僕は…、ずっとスーさんのオトメになるって…決めてたんですよ?スーさんだって、分かってる筈じゃないですか…。それとも…、スーさんは……あの約束………忘れちゃったんですか…?」
そう震える声で尋ねて…傷ついた瞳が見上げる。

遠い日の約束…そう、あれはもう十年近くも前の………。

それは、きっかけこそ少し趣旨の違うものであったが…。
それでもそう、ティノがいつかきっとオトメになると決めたその時、ベールヴァルドが自分のオトメになれと言ってくれたのだ。
だから、ティノはずっとそれを胸に、オトメになるための努力をしてきた。

オトメになって、いずれ王となるベールヴァルドを助けるために…。

ベールヴァルドも、ティノがオトメになるのを望んでくれているのだと思っていた。
だが、本当はずっと反対だったのだろうか?
度々、ガルデローベで会った時等は、ベールヴァルドも応援するようなことを言ってくれていた筈ではないか…それなのに…と思う。

「そっだことね!おめとの約束だら、俺は絶対に忘れねぇ!」

ブンブンと首を振り、珍しくも激しい勢いでベールヴァルドが叫んだ。
「じゃあ、何で…っ!」
「頭ではわがってんだけっぢょも…」
「…スーさん…」
ぎゅうっと…どちらも眉根をきつく寄せて…。
辛そうに見つめ合う。
まるで、苦しい思いすらをも、共有しているかのように…。
「そんなの……嬉しくないですよ、スーさん…」
「……フィン…」
「僕の事好きだから、心配してくれるってゆーのは嬉しいです。でも、だから闘わせられないなんて……それは…そんなのは…嬉しくないです…!」
唇を噛み締めていたティノが頭を振り、やがて吐き出すようにそう言った。
「闘わないオトメなんて、要らないじゃないですか…。そんなの、オトメじゃないです。マスターを守らせて貰えないオトメなんて…そんなのない!僕は、お飾りのオトメなんて嫌です!スーさんを守りたいし、スーさんの役に立ちたいんです!」
「フィン…」
「僕だって、スーさんが好きなんですよ?子供の時の約束だけで、本当にオトメになっちゃうくらい…!」
「!」
思いも掛けぬティノの告白に、ベールヴァルドは大きく大きく目と口を開けて…。
言葉もなく、ただ、ティノを見つめる。

「……あなたが好きです、スーさん…。その気持ちなら、負けないですよ?」

ティノは改めてそう言って、泣き濡れた顔のまま、それでもニコッと微笑んだ。
それはまるで花の綻ぶような可憐な笑顔。
「フィン…!」
長い腕が伸び、ぎゅうっと抱きすくめられる。
広いベールヴァルドの胸の中、スッポリと収まれば、頭の上にキスの感触。
「ずっと…、ずっとだ。おめが…好きだった…」
「スーさん…!僕だって…!!」
見上げれば、重なる唇。
ああ、とティノは思った。
ずっと、こうして欲しかったのだと、そんな自分の思いを知る。
今までにも、キスされたことはあった。
額や、頬や…唇にも一度……。
そして、認証時には必ずGEMに。
だが、本当はずっと待ち望んでいたのだ。
違う意味を持つキスを、その心と共に…欲しいと……。
軽く触れるだけのキスではなく、もっと熱く、もっと深く…と…。
「ん…、んむ、ふ…っ」
何度も何度も角度を変えて…貪るように交わす口付け。
舌が触れ合う度、頭の芯がぼうっとなり、身体の芯は熱く熱く熱を持ってゆく。

今、大切な話…してたのに……。
何か…もう……どうでも……。

「ん…っ、すー…さん…っ」
は、と僅かに離れた唇の間で息を継ぎ、名を呼べば、ごく間近で視線が絡んだ。
不埒な熱の浮かんだ空の色の瞳が熱い。
その視線に、ゾクリと身体が騒ぐ。
先に待つ事への期待と不安にドキドキして…、戸惑いと緊張でグルグルして…、大切な話なんてもう何処か遠くへ追いやられてしまって…。

「フィン、ええが?」

囁かれた問いかけに、ドクンッと鼓動が跳ねた。
嫌だと言ったらどうする気だろう、と少し興味を引かれながら…、それでも、尋ねてくれる優しさが愛おしいから…。
ティノはコクンと小さく頷く。
「…認証、しますよ」
ぎこちなく笑って、精一杯普通っぽくそう言えば、僅かに険しくなるベールヴァルドの顔。
気分を害したわけではないし、勿論、怒っているわけでもない。
ただ、そう…酷く真剣なだけ…。

ずっと好きで、好きで好きで堪らない相手と、ついに思いを遂げることが出来る、その時を迎えて……。

ゆっくりとベッドに押し倒され、真上からベールヴァルドが覗き込んでくる。
これ以上ない程険しい顔だが、その目元は赤く染まっていて…ティノは幸せな気持ちで微笑んだ。
この顔を怖いと思うどころか、愛おしく感じるなんて、恋とは何と偉大なものだろう。
「傷…、大丈夫ですか?」
「ん」
「…眼鏡…外しても…?」
「ん」
そろりと眼鏡を外し、ベッドサイドの棚の上に置く。
カタリと鳴った小さな音を合図にするかのように、ベールヴァルドは再びティノに口付けを落とした。
ちゅ、ちゅと何度も落とされる唇。
それは段々と位置をずらし、首筋を降りて…。
プチプチと器用に外されるボタンに、胸元が開き、外気が流れ込む。
「…ぁ…っ」
鎖骨とその下の薄い皮膚を唇が掠め、ゾクリとしたものが背筋を走った。
シュルシュルと衣擦れの音がやけに大きく響く気がする。

昔は…エッチしちゃダメだったんだよね……。

何故かふとそんな事を思い出して、ティノは今の時代のオトメで良かったなと、正直に思った。
昔のナノマシンは男性のDNAに弱く…、その為に、オトメは女性専用の職業であったのだ。
オトメは、オトメである限り異性との恋愛を禁止され、オトメ達は夢と恋のどちらかを選ばねばならない局面に度々さらされたのだとか…。
その後の度重なる改良の結果、現在では男性のDNAにも対応が可能となり、それ故、オトメは男女を問わぬ職業となったわけで……。

何だかそんなことに思いを馳せてしまえば、いつの間にか入り込んだ手が直に肌を撫でて…。
「おひゃっ!」
脇腹を腰へ滑り降りた手に、ティノはビクリと身を竦ませた。
くすぐったいと思うと同時に、何やら甘く切ない感覚が、背筋をザワリとさせるから。
「んんっ」
「やわけぇなぃ…」
ベールヴァルドの声に含まれる感嘆のような響きに、胸がドキドキする。
いつも鋭い空色の瞳が、今は何処か優しい感じすら受けるようで…それが真っ直ぐ自分の身体に降りているのが、今更ながらに恥ずかしい。
「ひゃあ…っ!」
ス…と更に下へと伸びる手が、何の溜めも躊躇いもなく、中心に触れた。
「ぁ、スーさぁん…っ」
ぎゅと握り込まれれば、期待と不安と羞恥がない交ぜになって…、どうして良いのか分からなくなる。
だが、そんな迷いも恥じらいも、ほんの一瞬のこと…。
その手が怖ず怖ずと動き始めた途端、鋭く身体を駆け昇った電流のような快感に、思考がショートした。
「んぁあっ!ぁっ、ああぁんっ」
強弱を付けて握られ、扱かれ、その度に走る強すぎる程の快楽にさらされて…。
喉の奥から声が上がり、目の奥からは熱い涙が滲んでくる。
ビクビクと跳ねる身体。
「はぁっ、あ、や、ぁあっ」
高められる熱に、ブンブンと振られる頭。
赤く染まった顔をじぃと眺め、また「めんげぇ」なんぞと思いながら、ベールヴァルドはその頬に、ちゅっと軽い口付けを落とした。



 
スーさんのオトメ★2 >



ズズ…と、徐々に徐々に沈み来るベールヴァルドの熱と塊。
それは内壁の抵抗を押し分け、奥へ、奥へと目指して…。
「はっ、ん…、ふぅ…っ」
きつく目を瞑り、浅く早い息を繰り返すティノに、ベールヴァルドは少し侵攻を止めて、
「痛ぐね?」
そう尋ねた。
十分に慣らしたつもりだが、それでも初めての事だけに、分からない事は多いから。
自分がティノに与えるのは、快楽だけであるといい…そんな事を思う。
「ん…っ」
尋ねられた言葉にティノが薄く目を開ければ、こんな時だと言うのに、心配そうなベールヴァルドの瞳…。
その優しさにきゅんっとすれば、内にも感じる熱いときめき。

あ…、何…?
何か……ちょっと…楽に…ってゆーか…ムズムズするってゆーか……。

「だい、じょ…ぶ…です…」
「そ?」
「ぁ、あ…っ」
熱と色とを戻す吐息。
「あど少しだから」
「ん…っ、ぅ…」
ズ…と、またベールヴァルドが入り込んでくる。
そして、ズズ…と感じていた抵抗がふと止まった。
何か…全てがきちんと正しい位置に填り込んだと、そんな風に感じられる不思議な安定感に、ふーっと息を付く。
ソロリと目を開ければ、ベールヴァルドも何処かホッとしたような顔で…。
「…何か…、お腹いっぱい…みたいな……」
素直な感想を述べれば、
「そっが」
色気がないと怒ることもなく、ベールヴァルドはコクンと頷いた。
「動いでも…さすけね?」
「う…、多分…」
こんなにいっぱいに、しっかり入り込んで、動く余裕なんてあるのだろうか…と、少し不安になるが、そう思う内にも、ズ…と楔が引き抜かれて…。
ホゥと息を吐けば、次の瞬間、ソレは再び最奥まで押し戻された。
「ひぁあっ!」
「…わり、痛がった?」
ティノの上げた声に、ベールヴァルドがまた動きを止めて尋ねる。
「ち、が…っ」
ティノはブンブンと首を振った。

もう、もう何でも良いから、動くなら動くにしてぇ〜〜っっ!!!
絶対、これ、途中で止められる方が辛いって、きっと、多分!!!

うう…と呻きながらも、心からそう思う。
奥の方がちょっと痛い気がするのだが、痛みを感じると同時に、何やらザワザワするような、ウズウズするような…収束のない、何かがそこから広がり始めている気がするから…。
「平気、です、から…、…シて!」
「…っ!」
荒く息を付きながら強く言えば、ベールヴァルドがゴクリと喉を鳴らした。
身の内で、ベールヴァルドの質量が増した気さえする。

あ……、ぼ、僕ったら、何てことを……!!!

ハッとして、言ったことを訂正…と思うが、そんな事は既に遅くて…。
「あの、ス……おひゃあぁあああっ!!!!!!」

ちょ、スーさん、顔コワ…!
怖すぎるって!!!
ちょ……こ…、殺される………っ!

チラリと見上げたベールヴァルドの鬼気迫る表情に、死すら予感するティノ。
だが、
「…好きだ」
ポツリと落とされたのは、愛の言葉で…。
「あ…!スーさん…!」
ぽわっと心の中が暖かくなる。

「僕も…すき…ってぇ?!あぁああっっ!」

今までの恐る恐るといった動きは何だったのか。
突如激しく動かれて、体中の感覚が一斉に狂い出す。
強制的に目覚めさせられる歓喜。
「や…っ、はぁああっ、う、そ…ぉ…っ」
それは身体の奥底から膨れ上がり、揺さぶられる度、震えを走らせて…。
嵐のような情熱が駆け抜ける。
感じていた筈の痛みは、いつの間にか快感へとすり替わり、それが感覚を支配して…。
「あっ、あっ、ぁあ、あ…んっ」
喉から漏れた甘い喘ぎに、ティノは混乱を覚えた。
何が何やら分からない。
けれど、確かに感じている気持ちよさ。
愛しているとか、愛されているとか、そんな実感はまだ遠くて…、ただ、動物的な感覚のまま、本能のままに求められている事に興奮している。
「は…ぁっ、すー…さぁんっ!あぁあっ!」
ゾクゾクと下肢から膨れ上がり、出口を求めて荒れ狂う欲望。
何でこんな事が気持ちいいのかと…不思議な気さえするのだが、突き上げられる度、内部から溶けて行くような…甘く熱い感覚が体中へ溢れて行くようで…。
「も、僕…っ、ぁああんっ」
「フィン…っ」
名を呼ぶ声は熱くて、甘くて…そんな響きは、今まで一度も聞いたことがなくて…ズクンと胸が切なく痛んだ。

ああ、でも……こんな時でも…怖い顔………。

それが堪らなく愛おしいと思って。
「あ、あ、あぁああああっっ」
押し上げられるまま快楽の高みを越え、ティノが欲望を放てば、
「……フィン…っ」
ベールヴァルドもまた欲望を吐き出して…。
身の内に、ベールヴァルドの熱さと脈動を感じ、それにまたゾクゾクしながら…ティノは幸せだと心から思った。




※続きます

+   +   +   +   +

とゆことで。
おとなしく守られないスーさんでした☆
後少し、残ってます。

エロ部分はサイトなんで、ちょっと端折ってみたり。。。(^^;
典芬のエロってのは、ストレートさに萌えますね★


あ、そういえば。
文中でスーさんがフィンを呼ぶ時に「ちょっとこせ」と言ってますが、「ちょっとこ」の優しい版だそうです。
福島弁調べてる時に見て、使おう〜vvvvと思ってたのでしたvvv
変な萌え(笑)