+ 花泥棒とティノのお姉様 +

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傾向; 基本典芬・米英(と、書く程のことは何もないです)


コーラル生が2人から3人の相部屋であるのに対し、パール生には1人につき1部屋が与えられる。
広々とした部屋には立派な調度品が置かれ、1年違うだけで、こんなにも待遇が違うものか…と、感心する程だ。

案内されたエリザベータの部屋には、写真が沢山飾られて、何だかとても賑やかだった。
中には子供の頃の物もあり、ティノは微笑ましくそれらを眺めて…。

「…あ、もしかして…この方が、もう決まってるっていうマスターの方ですか?」

やたら多く飾られている、黒髪にメガネの好男子をちょんっと指差し、尋ねてみる。
途端、ぱあっと明るくなるエリザベータの顔。
「ええ♪ドイツ国オーストリア辺境伯のローデリヒ・エーデルシュタイン様よ♪」
「オーストリアの…。あ、エリーさんも、オーストリア出身でしたよね?もしかして、幼馴染みなんですか?」
そう尋ねてみれば、エリザベータはニコニコの笑顔で、うんと頷いた。
「そう♪元々、親同士が親友でね、だから、生まれた時から知ってるって感じ?」
「へ〜!すごい…!素敵ですねぇ、そーゆーの…」
「でしょ♪オトメになるってゆーのも、子供の頃からの約束なんだよね♪」
そう言って、写真のローデリヒに向ける眼差しは、とても優しくて…嬉しそうで…。

エリーさん…、ローデリヒさんがすごく好きなんだ……。

何だかいいなと思ってしまう。
トリアスのNo.1を務めるエリザベータなら、マイスターオトメになるのは確実であろう。
勿論、今年一年で、大きく順位を落とすようなことがなければ…だが。
それでもきっと、望みの通り…。
エリザベータがローデリヒのマイスターオトメになり、卒業して行く姿が、もう目に浮かぶようだ。

そっか…、子供の頃からの約束…かぁ………。
結構あるんだろうな…そーゆーの…。
僕も…ちゃんとスーさんのオトメになれるかな……。

我が身を振り返れば、何だか溜息が漏れてしまう。
一応、ティノの入学試験の成績は良くて、今の席順は3位である。
マイスターオトメになるには、マイスターGEMに選ばれる必要もあるから、成績だけでどうとは言えないが…。
それでもやはり、国王付きのマイスターオトメを目指す身なれば、トリアスを務めるくらいでありたいと思う。

トリアスって3位までだもんね……。
う〜…ギリギリだなぁ…。

「頑張らなきゃ…」
はー…っと溜息混じりにそう呟けば、
「あれ?もしかして…ティノちゃんもマスターになって欲しい人がいるの?」
エリザベータがやたら嬉しそうな様子で、顔を覗き込んできた。
「えっ、いや、あの……、それは、まあ……」
もにょもにょと口ごもれば、俄然色めきだつエリザベータ。
「えー、だれだれ?」
ズズイッと詰め寄られ、ティノはオロオロと視線を彷徨わせてしまう。

今まで、ベールヴァルドのオトメになりたいと思っていることを、誰かに打ち明けたことはない。

何せ、相手はこの国の王様なのだ。
マイスターオトメになることだって、並大抵のことではないのに、その上国王のオトメになりたいだなんて…。
いくら、子供の頃に約束したとは言え、何だかあまりにも大それていると思えて……。
「えっ、ええと、あの、そんな…誰…って言うかぁ〜……」
「ほらほら、お姉様に隠し事はなしよ〜☆」
言っちゃいなさいよ♪なんて言われ、

「…………ス…」

つい、ポツリと言葉が漏れる。
「す?」
「………スーさんって……人…なんです…けど……」
そう言った途端、何だかもうとにかく恥ずかしくて、ティノはぼぼぼっと真っ赤に顔を染めた。

い…、いいいい、言っちゃったっっっ!!!!!!!
スーさんの事…!
誰にも言ったことナイのにっっっっ!!!!!!!

ティノが、ベールヴァルドのことを『スーさん』なんて呼んでいるのは、まだこの学園では誰も知らない事である。
だから、エリザベータは、それがこの国の王様のことだなんて、気付きもしないで。
「ふんふん、どんな人?」
興味津々といった感じで聞き返してきた。
どんな人と聞かれれば、ぽわんと脳裏に浮かぶベールヴァルドの姿…。
「えっと…ぉ、スーさんは……大きな人で、背とかすごく高くて…、その、顔は…ちょっと恐いんですけど…、で、でも、ホントはすごく優しくって…!何て言うか…ちょっと可愛い所もあって……あ、目がすごく綺麗な空色なんですよ!それで…」
最初は恥ずかしいような気がしたが、それでも思い浮かぶまま伝えるのは楽しくて……。

会いたいなぁ…なんて思いが頭を掠め、甘い痛みがきゅんと胸を刺す。

ベールヴァルドとちゃんと『会えた』のは、一体いつが最後だっただろう…。
入学式の時に姿を見る事は出来たが、会話らしい会話をする時間はなくて………。

何だか、会いたくて堪らなくなる。
別に、会ってどうするというわけでもないのだ。
いつだって、ただ隣に座り、他愛のない話をして……のんびりと時間を過ごす。

昔からずっと…本当に、ただそれだけで……、それでも……。

「ティノちゃんはスーさんが大好きなんだね♪」

「えっっっっ?!?!」
「今、会いたいなぁって思ってたでしょ?」
ニヨニヨ〜と笑って言うエリザベータ。
「な、何で分かったんですか?!?!」
心の内を見透かされて、ティノは動揺のあまり正直にそう聞いてしまった。
エリザベータはチッチッチと指を振ってみせる。
「ふふ〜ん♪お姉様を甘く見ちゃダメよ♪恋する乙女は、人の恋にだって敏感なんだから♪」
「ええええ〜〜っっっ?!?!?!こ、恋って…そんな!っていうか、だって、スーさんって…男の人ですよ?!?!?!」
「あら、そんなの関係ないわよ♪だって、好きなものは好き♪でしょ?」
「…………」
あっけらかんと笑われ、ティノは目から鱗の落ちる思いでエリザベータを見つめた。

好きなものは好き……で…いいんだ……。

自分の思いが『友達として好き』から、少し逸脱しているかもしれない…と気付いたのは、いつだっただろう。
ベールヴァルドの父王が病に倒れ、王位の継承等で忙しくなって…、全然会えない日が続いて……。
会いたくて会いたくて…苦しくて堪らなくなって…初めて……、ティノはただの友達以上の気持ちがある事に気付いてしまったのだ。

でも……おかしいんじゃないかって思ってた…。
スーさんも僕も男で……なのに、こんな気持ち…って…。
でも、いいんだ……別に……。

「それでそれで??」
惚けているティノに柔らかな笑みを向けつつ、エリザベータは尋ねた。
可愛い後輩少年の恋話は、何やらとっても胸をときめかせる物がある。

スーさんって…どんな人なのかしら♪
こんな可愛い子が好きになるんだもん、きっとすっごい格好良かったりするのよねぇ♪
うわーーvv見てみた〜〜いvvv
ってゆーか、ティノちゃん可愛すぎ!!!!

「それで…って……それだけっていうか…」
「告白とかしないの?」
「し、ししし、しないですよぉっっっ!っていうか、出来ませんよぉおおっっ!!!」
「えー、何で?」
きょとんと聞かれるが、ティノはバタバタと両手を顔の前で振って『とんでもない』と示した。

何でって…だって、スーさんは…、スーさんは……。
っていうか、告白って〜〜〜!!!!!

考えただけで、おひぇえええ〜〜〜っっっとか叫び出しそうになる。
見ているエリザベータはそんなティノが可愛すぎて、堪らない。

「む、無理です…!僕、告白なんて…絶対、無理…!」
「えーー!勿体なーーい!どんな事でも、絶対無理なんて言っちゃダメよ!最初から諦めてちゃ、大丈夫な事だってホントに無理になっちゃうんだから!」
「う…ううう、そ、そうなんですけど……」
でもでもぉ〜と言い募るティノに、エリザベータはまたピッピッと人差し指を振って見せた。
「いーい、ティノ?恋もオトメも同じよ?大切なのは、力と、技と、根性よっ!」
「ち…力と技と根性……?」

根性はともかく…力と技って………。

「頑張りなさい!私が応援してるから!」
一瞬、考えてしまったティノだったが、応援してるから!と力強く言われれば、何だかとても嬉しくなって…。
思えば…今まで誰にも打ち明けた事などなかったから…。

誰かに話すのって…いい事かも……。
応援…か…。
僕、いいお姉様に恵まれたのかな…。

「……ありがとうございます、エリーさん!僕、頑張ります!」
ティノはウンと1つ頷くと、はにかんだような笑顔を浮かべて、そう言った。





続いてます〜☆


+   +   +   +   +

とゆことで……まだ続いてますが;
ティノのお姉様はエリザベータさんです☆
エリザベータさん大好きですvvvvいろいろと(笑)

次は、これの続き上げる前に、ロマーノの出てくる話を先にアプしそうです。
(てか、ホントはそっちの話を先に書いてあって、この話は予定になかったんですが…、エリザベータ出したい…!ティノ可愛がって欲しい…!とか思って…。。。)


2009.07.01.
 
 
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