+ アイルーキッチンで朝食を★ Episode00-2 +

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傾向; 典芬



どうしようどうしようどうしよう…。
まさか、夜のオトモがそんなに恐くて危険なことだったなんて…死んじゃうかもな位痛いなんて…、どれだけ痛いの?
ってゆーか、ホント、夜のオトモって何するの?
何したらそんなに痛いの?
どうしよう、僕、痛いのやだよ…。

家に戻ったものの、フランスに聞いた事で頭が一杯のフィンランドは、何をする気にもなれずに…。
「どうしよう…」
キッチンをウロウロと歩きながら、小さくそう呟けば、
「……フィン、おめぇ…具合悪ぃんでねぇのけ?」
今日は留守番をしているノルウェーが、素振りの手を止めて、フィンランドの顔を覗き込んできた。
「え…あ……、へ、平気だよ…!」
「平気って…真っ青だっぺよ…?」
プルプルと首を振ったフィンランドに、ノルウェーは顔を顰める。
「具合悪ぃんなら、無理しねぇで休んでろ」
「無理って言うか……。あ、あの…、ノルウェーさん、夜のオトモって…何をするか知ってますか?」
「は?」
突然の話題の変化に付いて行けず、ノルウェーは一瞬きょとんとして…けれど、フィンランドのこれ以上ない程真面目な顔と、必至な様子を見れば、ゴホンと軽く咳払いをした。
「いや…、まあ…知ってるけんど…?」
「じゃ、じゃあ、教えて下さいっっ!何をしたら、死んじゃうほど痛いんですか?!?!?!?!」
「はあ?」
「だって、フランスさんがそう言ったんです!夜のオトモはすっごく痛いんだって…。スーさんが相手じゃ、僕死んじゃうかもって…!」
フィンランドの言葉に、ノルウェーはただひたすらポカンとしてしまう。
この白いキッチンアイルーが、スウェーデンにとって特別な存在だということは分かっていたが…、まさか、そんな関係になろうとしていたとは……。
「……おめ、スーの夜のオトモになったのけ?」
「そうなんです!僕が自分で、やるって言っちゃったんですよ!どうしましょう?!どうしたらいいんでしょう?!?!?!」
「んー………」
涙目になって詰め寄るフィンランドに、ノルウェーは顔を顰めて呻くと、やがてフウとため息を付いた。
「ま、だいじだっぺ。そう心配ぇすんな」
「だ、大丈夫って…!心配するなっていわれても、心配しちゃいますよぉ!」
「んー、まあ、最初はそんくれぇ痛ぇかもしんねぇけっど…そんだけでもねぇべし…。それより、おめぇがスーのこと好きなのかどうかのが問題だっぺ」
「え…?僕が?…って、そりゃ勿論、大好きですよ!」
「…んー…それは…主人だからだべ?そうでねぐて…」
「そうじゃなく…?」
きょとんとするフィンランドに、ノルウェーは微かに表情を和らげた。
「んだ、大事なことだべ。よっぐ考えてみろ」
「で、でもでも、夜になったらスーさん戻って来ちゃいますよぉ!そしたら僕…僕……」
「だいじだぁ。スーはおめの事好きだっぺよ。んだが、おめが嫌がることはしねぇべ」
「……あ…」
ぷすりと笑って諭すように言われたその言葉に、何故かドキリと鼓動が跳ねる。
それは、スウェーデンが自分を好きだと言われたからじゃない。
好きだから、嫌がることはしないだろうという方だ。

「フィンランド、おめがちゃーんとスーのこと好きだら、何も心配ぇねぇ。痛ぇのなんてちぃっとだけだ」

「………そうなの?」
「んだ。ちゃーんと好きなのわがったら、スーにそう言え。んだけっど、もう少し大きくなってからでええと思うけっどが…」
そう言って…水を呑んでくるなんて、ノルウェーはキッチンを出ていった。

痛いのは…ちょっとだけ……?
僕が…ちゃんとスーさんのこと好きなら………?

「…僕……ちゃんと…好きだよ……?」
ねえ?と自問して…。
後に残されたフィンランドは、きゅんと痛んだ胸を押さえた。
「………」
ノルウェーは、スウェーデンはフィンランドが好きだから、フィンランドの嫌がることはしないだろうと言った。
それはその通りだろうと、フィンランドも思う。
それに、スウェーデンは優しいから、フィンランドが嫌がったり怖がったりする事は、普通にしないに違いない。
だがフランスは、我慢はココロとカラダに良くないとも言った。
だからなのか…、どうも何かが引っかかるのは…。

僕……、スーさんに何か…我慢…させてるのかな…?

そう思うと、何故か胸がざわついて落ち着かない気分になる。
夜のオトモが何をするのか、結局分からないままだから、何を我慢するのかも分からない。
だが、それでも…死んでしまう程痛いなんて脅かしておきながら、フランスは「やめた方がいい」とは言わなかった。
ノルウェーにしてもだ。
痛いという事は否定しなかったが、それでも、気持ちが大事だと言ったり、大きくなってからでいいと言ったり…まるで推奨するかの様で……。

夜のオトモって…本当に何なんだろ……。
僕は痛いけど…スーさんは痛くない事で…、でも、僕もスーさんをちゃんと好きなら、痛いのはちょっとだけだって…。

「…全然、分かんないや……」
途方に暮れて呟いて、ハーッと溜息を付く。
「…でも…」

全然分かんないけど…夜のオトモは、愛とか好きとかが重要みたい……。
それって……好きなら、死んじゃう位痛いことだって我慢出来るって事なのかな…?
だって、好きだから我慢してくれるのなら、その逆だって…あるって事だもんね……?

そう思えば、そうかも知れないと、何だかすごく思って。
「そっか……じゃあ、僕だって…きっと我慢出来るよ!」
だって、スーさんの為だもん!と。
ぎゅうっと拳を握りしめ、よしっと気合いを入れる。
「スーさんのこと、ちゃんと好きだもん!だからきっと、大丈夫…大丈夫……うん、きっと…!」
大丈夫大丈夫と、暗示を掛ける様に何度も繰り返して。
「僕、立派に務めを果たしてみせるよ!」
フィンランドは誰にともなくそう宣言した。



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