+ 神父と小悪魔の誘惑 +

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傾向; 典芬


思えば、ずっと触れてみたかったのだ。
デンの家で、ティノを捕らえたあの時から…。
だが、ティノは悪魔だから、と…。
デンを誘惑し、夜毎淫らな行為に耽っていたのだ…と思えば、何やら複雑な気持ちになって…。
けれど、実際にはティノではなかったのだ。

ほんだら…ティノが惑わしたのは、俺だけなんだべか…。

そう思えば、胸の中を何か甘くて切ない物が満たす。
「…ん…っ」
二度、三度、軽い口付けを繰り返しベールヴァルドは、スッと身を離した。
本心では、このまま惑わされてしまいたい。
だが、まだ残る理性が、それはならないことと自身を咎めるから…。
「やっぱり…いげねぇなぃ…」
そう呟き、ティノに背を向けようとすれば、
「あ…、ベールさん…」
切なげな声に呼び止められ、ベールヴァルドは振り返った。
熱に潤む葡萄色の瞳…。
「!」
その瞳にキッと力がこもる。
「?!」
途端、ベールヴァルドの全身に痺れるような感覚が走った。
カッと身体の奥底で熱が弾け、広がって…。
「ティノ、おめ…?」
恐らく、これが本当の『魅了』なのだろう。
身体が勝手に動き、ポケットを探って…。
取り出した小さな鍵は、ティノを壁に繋ぎ止めている手枷と足枷のもの…。
ダメだと思うのに、自由の利かない手は、その枷を解いてしまった。

ああ、逃げられちまう……。

ベールヴァルドはそうガックリと胸の内で落胆する。
何故か、命の危険よりも、その事の方が重大に思えた。
ティノが逃げていってしまうことの方が…。
ドンッと、自由になった腕でベールヴァルドを突き飛ばすティノ。
床に転がったベールヴァルドをじっと見据える瞳は、熱く濡れている。
ティノは思い詰めた表情のままベールヴァルドに近づくと、その上に乗り、腕を振り上げて……。

「惑わしたのは、ベールさんの方ですよ」

そして、ビリリと切り裂かれたのは、ベールヴァルドの神父服だった。
首元までかっちりと覆われていた黒いそれが、一瞬で大きく破られ、肌が外気に触れる。
「おめ…っ?!」
「ベールさんが、僕のこと…惑わしてるんです…」
真上から見つめる瞳が、近付いて近付いて…。
唇を覆う柔らかな感触。
「ん…っ」
「ぁ…、ん…む…っ」
ペロペロと舐めるみたいな口付け。
辿々しいそれは、けれど懸命であるために情熱的で…ベールヴァルドの中の何かを弾けさせる。
「!」
先程まで、支配されていた身体が自由に動くことに気付くと、ベールヴァルドはティノの髪にそっと触れた。
サラサラとした金の髪は、思っていた以上に柔らかい。
「…めんげぇ…」
離れた唇で小さく呟けば、ティノがカアッと頬を赤らめた。
「ま、負けませんからねっ!」
「ん?」
一体何に負けぬと言うのか…。
ティノはそう宣言をすると、ベールヴァルドの首筋に唇を寄せ、ツ…と舐め上げる。
「…っ」
首筋を辿り、鎖骨を降りて、なだらかな胸元へ…。
広い胸に手を這わせ、また唇を落として…。
胸の尖りをちゅうと吸えば、ベールヴァルドの腹がピクリと震えた。
「どうですか?気持ちいいですか?」
えへへ、なんて笑うティノ。
だが、
「……ダメだなぃ…」
ベールヴァルドの唇から漏れたのは、そんな呟き。
「え…、ダメって…まさか…?」
この期に及んで拒絶…?と、ティノは思うが、ベールヴァルドはガバリと身を起こすと、一瞬で身体の位置を入れ替えた。
「ん、やっぱ、こっちだべな」
「おひゃああっ?!?!」
身体の大きなベールヴァルドに覆い被さられ、その威圧感に思わず悲鳴を上げるティノ。
ベールヴァルドはティノの柔らかな身体に唇を落とした。
元々、肌を覆う布の少ない服を着ていたティノである。
だから、ほんの少しずらしただけで、どこもかしこも露わになってしまって…。
薄紅に色付く胸の尖りをベロリと舐めれば、ビクッと大きな震えが走る。
「ひゃっ、あぁ…ん…っ」
「ど?気持ちいい?」
先に聞かれたことを聞き返してみれば、熱に潤んだ瞳が悔しげにベールヴァルドを睨んだ。
林檎のように真っ赤に染まった頬が可愛らしくて、ついぷすりと笑ってしまう。
「う…ぁ、べ、ベールさん、絶対、神父じゃな…っ」
「紛れもねぐ神父だげっちょも」
「うそだぁ〜っって、ああっ?!」
腰を覆う僅かな黒布の隙間へと手を差し入れれば、ティノは大きく身を竦めた。
「ああんっ、や…ぁ、そんな、ずる…ぃ…っ」
中心を握り込めば、薄い金の頭がブンブンと左右に振られる。
「なして?ずりぃの?」
「いあぁっ?!やっ、やあぁあん!ふぁあぁ、んっ」
ヌルリと先走りに濡れた先端を親指の腹で擦ってやれば、半泣きのような高い声が上がって…。
快楽に捕らわれたティノは、ずるいの意味など答えてくれる余裕はなさそうだったが、それはそれでベールヴァルドにとっては十分な反応だった。
「あぁあ、あ…、はあ…ぁ…ん…」
ぎゅうっと目を瞑り、与えられる快感に身を捩るティノが堪らない。

愛らしくもそそられるその表情をもっと眺めたくて。
甘く艶やかな声をもっと聞きたくて。

「…っ」
「やっ、ん、や…だ、だめ…ぇ…っ!あっ、やあぁああんっ!」
ついつい強く扱いてしまえば、ティノの背が撓り、大きくその身が跳ねた。




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