+ アイルーキッチンで朝食を★ Episode;00−1 +

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傾向; 典芬


「な、何が…ですか…?」
「友達が欲しがったんでねぇの?」
「え?」
「おめ、前に他のアイルーさ雇ったほうがえぇっで言っでたし…、それに…いっづも、ギリシャが来っど、ドアんとこで見てたべ?ほだがら俺ぁてっきり…」
「え……?あ………!」

そう、オトモアイルーを雇うように勧めたのは自分だ。
それは覚えていたし、だからみんなを雇ったのだと思っていた。
だが、スウェーデンが他のアイルー達を雇ったのは、それだけが理由ではなかったらしい。

え………、僕が…喜ぶかと…思ったから…?
友達を欲しがってるように見えたから……?
だから…なの…?

確かに、ギリシャがアイルー達を連れて来る度、フィンランドはそれが気になってしょうがなかった。
だが、それは友達が欲しかったからではない。
むしろ、その逆とさえ言えるような理由からで…。
そうだ、フィンランドはいつだって、スウェーデンのお気に入りになってしまうような、そんなアイルーが来ないといいと…、そんな風に思って様子を伺っていたのだ。

うわ………、僕ってば……!
ホントはずっとずっと前から、他の子が来るの嫌だったんだ…。

その事に思い至り、フィンランドはカアッと頬を染める。

他のアイルーが来ることを恐れていたのは、他の誰かにスウェーデンを取られてしまうのが嫌だったからだ。
自分の居場所を取られ、その結果、スウェーデンの側にいられなくなってしまうのが嫌だったから……。

「デンやノルが来だ後も見でっから…、一緒キッチンさ入っでくれんのがえぇんだべって……」

「…スーさんは…僕が寂しくないようにって……思ってくれたんですね?」
「ん。俺がクエストに行っでる間、おめ一人だべ?ほだがら、おめがオトモアイルーの話をしだ時、寂しいんだべな…っで思っで…」
コクリとスウェーデンが頷く。
「…僕、そんなつもりじゃ…なかったんです…」
「そっがぁ、どうも俺ぁ勘違いしだなぃ…」
ヨシヨシと大きな手が優しく髪を撫でるのが心地良い。
フィンランドはペタリとスウェーデンの広い胸に身を預けた。
久々に感じる温もりが嬉しくて、クビにならないと分かった事も嬉しくて…幸せだとシミジミ思いながら…。

これ…、夢じゃないよね…?

「すまねがったなぃ」
嬉し過ぎて、幸せ過ぎて、夢かも知れないとさえ思える程だと…そんな風に思っていれば、囁かれたのは謝罪の言葉で…。
フィンランドは慌てた様にプルプルと頭を振る。
「スーさんは悪くないですよ!勘違いしたのも僕の方ですし……それに…、クビにならないって分かったから、もういいです!」
「そ?」
「はい!」
頷いてエヘヘと笑えば、スウェーデンもぷすりと笑った。
それからひたとフィンランドを見つめて、
「フィンランド、俺は、おめだけは絶対、手放したりしねぇ。だがら、心配しねぇでえぇど」
言い聞かせる様に、もう一度。
「はい」
これ以上ない程心配していたから、嬉しさもまたこれ以上ない程で、まさに天にも昇る心地なんぞと思いながら頷く。
「何があっても、それは変わらねぇがら…、おめもずっと側にいてくなんしょ」
「スーさん…!勿論です!僕、ずっとずっと、ずーっと側にいますよ!」
「そっが」

側にいてなんて……アイルーに頼むハンターは、スーさんくらいだよね、きっと…。
スーさんて本当、不思議で面白い人…。
この人が僕のご主人様で、ホントに良かったな…。

フィンランドはふふと笑うと、スウェーデンにぎゅうっと抱きついた。
今夜、思い切って言いに来て、本当に良かったと思う。
そうでなければ、きっと明日も明後日もずっと、いつクビにされるか…とビクビクして過ごしていただろうから…。
「スーさん、大好きです」
嬉しい気持ちを込めてそう言えば、
「ん、俺もだ」
スウェーデンはちゅっと軽いキスを額に落としてくれた。
それがまた、何だかくすぐったいみたいに嬉しくて…ほわほわと胸が温かくなる。
その温かさと、包み込んでくれる温かさが、あまりにも心地よくて…。
フィンランドは、ふわぁと小さな欠伸をした。
ここ何日も、ずっと不安でよく眠れなかったから、安心してしまったら、急に眠たくなってきたのだ。
「今日はここで寝でけ」
トロトロ〜としてきたフィンランドに、スウェーデンがぷすりと笑って言う。
「ん〜…でも…ぉ……」
「おめ、夜のオトモになんだべ?んだら、今夜からまた一緒だ」
眠たくて眠たくて目が開けられないのだが、聞こえるスウェーデンの声は妙に楽しそうだ。
「…そーなんですか…?」
どうしてかな?なんて思う内にも、そっとベッドに寝かされて…。
「おやすみ、フィン」
優しいキスがまた額に落とされた。
「…ん……」
幸せな眠りへと落ちて行きながら、囁きとキスには僅かに意識を戻して…。
フィンランドはお返事をしなきゃと、僅かに微笑む。

あ…、そう言えば…、夜のオトモって何するんだか知らないままで言っちゃった……。
それって…一緒に寝るのと関係あるのかな…?

そんなことをチラリと思い出すが、今夜はもう目を開けることすら億劫だから。
明日、スーさんに聞いてみよう…、なんて思う。
そう、明日はまたきちんとやって来るのだから。
今まで通り、スウェーデンのキッチンアイルーで居られる明日が…。

明日が、ちゃんと明日で…。
嬉しい明日で…、良かったな…。

そして、抱え込む様に回された腕に、また幸せを噛み締めながら、フィンランドは今度こそ本当に意識を手放したのだった。



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