+ 森の中の出会い +
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傾向; 典芬
「そんで?北の森はどうだったんけ?」
船に戻れば、待ってましたとばかりに集まってくる仲間達。
「噂の魔女とか、化け物とか、何かいたの?」
「ん、何もね。普通の森だべ」
デンマークとアイスランドの問いかけにプルプルと首を振れば、二人は「なーんだ」と言わんばかりの顔をして…。
「じゃあ、スヴィーは何しに行ったの?」
「んだんだ、おめ、絶対ぇ行きてぇって頑張って…何の収穫もねがったんだら…」
「収穫はあっだ」
「「???」」
「スヴェーリエは人ば探しに行ったんだ」
スウェーデンの言葉にきょとんとする二人の横から、ノルウェーが訳知り顔で言う。
「人?でも、あの森って誰も近づいちゃいけないんでしょ?スヴィー、魔女に会いに行ったの?」
「……んでね…」
不思議そうなアイスランドに、スウェーデンは何かを言いかけてやめ、ただぷすりと笑った。
北の森には、魔女も魔物も居なかった。
居るのは、寂しがり屋の魔女の息子と、その愛犬だけだ。
「何?スヴィーってば…?」
「何だべ…。なあ、ノル、あの森に誰がいんのけ?」
これ以上は何を聞いても答えてくれなさそうなスウェーデンから、ノルウェーに視線を移すデンマーク。
怪訝そうな2人に肩を竦めてみせて、ノルウェーは肩を竦めた。
「ま、いつか…会う事もあんべ」
「ええ〜、何それ?それまで内緒って事?」
「秘密は良くねぇっぺよ〜!なあなあ、ちょっとくらい教えたってえがっぺ〜?」
「あんこ、うざい」
「……」
スウェーデンはそのまま3人の側を離れると、船の後方へと移動して、遠離る森を見つめた。
目を懲らせば、こんもりと茂った木々の間…、その何処かに白い人影が見えるような気がして…。
次はいつ会えんべな……。
早ぐまた…会いてぇなぃ……。
フィンランドの輝く笑顔を思い出せば、ただそれだけで胸が騒ぐ。
今日初めて会って、ほんの少しの時間一緒に居ただけの人を、何故こんなにも恋しく思うのか…。
それは不思議で、けれど、当たり前のようで…。
ずっとずっと、分かっていた事のようだった。
だってそう、フィンランドには出会う前から惹かれていたのだ。
出会って更に惹かれるのは、全然おかしい事じゃない。
それ程、フィンランドはスウェーデンの好みにピッタリだったのだから。
「…土産、何がえぇべな……」
行く先の街に、何があっただろうかと…。
そのどれを土産に持ち帰ったらフィンランドが喜ぶだろうかと…。
早くもそんなことを思いながら…浮き立つ心にぷすりとスウェーデンは小さく笑った。
+ + + + +
とゆことで。
この話は、夏コミ新刊の『海渡る風の歌』の番外編になります。
本の方はこの話の数年後なので、この出会い部分についてはかする程度の回想が出てくるだけなんですが。
書いちゃった方が自分的に楽だったので、ゲンコ途中に書いたのでした。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
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