+ アイルーキッチンで朝食を★ Episode;00−1 +
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傾向; 典芬
今日もいっぱいだな……。
ポッケ農場の前の広場には、今日もまたアイルーを沢山連れたギリシャの姿があって…。
「………」
フィンランドはまた玄関のドアの陰から、そっとその様子を伺っていた。
今日のアイルーはどっちだろ…。
契約前のアイルーは、見た目でどちらとは分からない。
それでも、ちょっとくらい強そうに見えるとか、器用そうに見えるとかないだろうか…と目を凝らしていれば…その横をスルリと……。
すり抜けるようにして、スウェーデンが家を出て行った。
「あ、スーさん!」
お出かけですか?と声を掛ける間もなく、スタスタと広場へ向かって行くスウェーデン。
そのまま、ギリシャの元へ行くと、二言三言何事かを話して…。
また…雇うのかな……。
そう思うと、何だか妙に胸が騒ぐ。
今度のアイルーは、オトモなのかキッチンなのか…、それが先程までよりも、もっとずっと気になる。
オトモならまだいいのに…とか、どうしよう…なんて思っている自分が不思議で、軽く混乱しながら、フィンランドが様子を伺っていれば、スウェーデンは程なくして、一匹のアイルーを連れて戻ってきた。
どうしよう………。
どうしよう…どうしよう……。
茶色い毛並みに、サラサラした金髪。
スウェーデンの顔と威圧感が恐いせいだろう、脅えた顔をしているが、眼鏡を掛けたそのアイルーはいかにも賢そうで…どう見ても、オトモアイルーには見えない気がする。
「フィン、エストニアだ。おめと一緒にキッチンさ入っで貰うがら」
「そ、そうですか〜」
スウェーデンの言葉に、やっぱり!と思いながら、フィンランドはそれでもニコッとエストニアに笑いかけた。
「えっと、僕はフィンランドだよ。よろしくね」
「よ、よろしく…お願いします…」
エストニアは恐怖に引きつった顔を、僅かに和らげ、フィンランドの握手に応じる。
「キッチン案内するね」
来てと言えば、エストニアは大喜びでスウェーデンの後ろから駆けてきた。
「君、ここ長いの?ご主人様の顔、恐すぎない?」
フィンランドに追いつくと、エストニアは早速小声でそう尋ねてくる。
「あはは…、うんまあ、確かに…僕もまだ時々恐いけど…。でも、スーさんはとってもいい人だよ」
だから大丈夫なんて。
そう…、スーさんはすごくすごくいい人だよ。
優しくて、温かくて、安心出来て……。
だからきっと、この子だってすぐに…スーさんが大好きになっちゃうに決まってる。
それはいいことの筈だった。
自分の主人が、みんなから好かれるのは喜ばしいことの筈だ。
そう思うのに、分かっているのに、何故かそれがすごくイヤで…。
そんなことを思う自分もイヤな気がして、胸の中も頭の中もグルグルしながら…。
キッチンの入り口にかかった暖簾をくぐれば、
「お?何だおめ、新しい料理人け?」
トレーニング中だったデンマークとノルウェーが手を止めて、いそいそと寄ってきた。
「ふーん?フィンより賢そうだな」
「ちょ、ノル君!何、成る程って顔してるの!」
「本当の事だべしゃ」
ニヨニヨと笑うノルウェーに、酷いよー!と言えば、デンマークがガハハと豪快に笑う。
「んだな〜、フィンより大分シッカリしてそうだっけ!」
「それ言っだら、あんこよりもだべ」
「皆さん、仲いいんですね〜」
何か安心しましたと、エストニアはようやくホッとした顔で言う。
「おう!おめも今日がらよろしぐな!」
「よ、よろしくお願いしますね」
「ん」
「よろしくね」
礼儀正しくきちんとお辞儀するエストニアに、ノルとフィンは頷きを返して。
「スーは顔さ恐ぇけっどが、根はイイヤツだかんな、だいじだがぁ心配ぇすんな」
デンマークはその背中をバチンと叩いてそう言った。
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