+ アイルーキッチンで朝食を★ Episode;00−1 +
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傾向; 典芬
エストニアは頭が良かった。
エストニアは手際が良かった。
エストニアは失敗が少なかった。
新しく来たキッチンアイルーのエストニアは本当に優秀で、しかも、いいアイルーだった。
普通の時ならきっと仲良くなれただろうと思う。
否、今だって、結構仲良くしている。
だが、仲良くして、彼がいいアイルーであればある程、フィンランドは何だかどんどん複雑な気持ちになって……。
スーさんは…僕をクビにするのかも……。
その為にエストニアを雇ったのかも……。
だってそうだよね、僕、失敗ばっかりで…、昨日だって、スーさんにマズイ物食べさせちゃって…。
考えれば考えただけ、どんどん落ち込んでしまう。
そもそも、最初の最初に何故、スウェーデンが自分を雇ってくれたのかが分からない。
フィンランドがこの村に連れてこられたあの時、一緒にいたアイルーの中には、レベルが上だったり、役に立つスキルを持った者も居たのだ。
なのに、何故…何がスウェーデンの気を引いて、彼に自分を雇わせたのだろう。
スーさん、アイルー雇うの初めてで…何が役に立つとか立たないとか、分からなかったのかも……。
レベルが高い子は契約金も高いし…それが理由とか…、それか…たまたま、目が合っちゃったから…それで僕にしただけなのかも……。
そう、あの時、本当にバチッと目が合ってしまって…。
初めて見たスウェーデンの顔の怖さに、フィンランドは思いっ切り竦み上がってしまったのだ。
ってゆーか、ホント何でアレで雇ってくれたんだか……。
僕、半泣きだったし…、ガタガタ震えちゃってたよね……。
今思えば、相当印象が悪そうだと思うのだが…。
だが、思い出してみれば、エストニアも雇われた時は相当怯えていた。
顔が怖く、いつも威圧感バリバリのスウェーデンだから、もしかしたら他者のそういった反応には慣れてしまっているのかもしれない。
今なら……怯えたりしないのにな……なんて、そんな事もないか…。
でも、今なら、スーさんが優しいの分かってるし………クビになったら…やだなぁ……。
スーさん、温かいし…いい匂いだし…、ぎゅってされるの気持ちいいし……。
あ…、そう言えば…暫くぎゅうってして貰ってないな……。
ふと気が付いて、胸がチクリと痛んだ。
他のアイルーが来てから、めっきりとそういった事がなくなった。
撫でて貰ったり、抱き締めて貰ったり、一緒に寝たり…。
そういった触れ合いは、一匹にすれば他のアイルーにもしなければならない。
そうでなければ不公平になってしまうと、そう言ったのはフィンランドだ。
フィンランドが不公平はダメだと言ったから…、だから、しなくなったのだろう。
「……不公平なんて…言わなきゃ良かったな…」
ポツリと呟けば、何でか涙がこみ上げてきて…。
フィンランドはくすんと鼻を鳴らした。
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